プレミアリーグ2013/14 レビュー 「世界のコケ方ショー」 vol.2

もう疲れてきた。


サンダーランド(14位)


<IN>
GK マンノーネ
GK ウスタリ☆
CB ディアキテ
CB ロベルジュ
CB ベルヒーニ☆
SB チェルーストカ
SB ドッセーナ
SB M.アロンソ
CM エル=ハッジ・バ
CM カブラウ
CM キ・ソンヨン
CM ブリドカット☆
SM ジャッケリーニ
SM マヴリアス
FW アルティドー
FW チ・ドンウォン
FW ボリーニ
FW カールソン
FW スココ☆


<OUT>
GK ミニョレ
DF キルガロン
DF ブランブル
DF ディアキテ☆
MF マクリーン
MF セセニョン
MF A.エンディアイェ
MF カブラウ☆
MF ヴォーン☆
FW R.ノーブル
FW グレアム
FW チ・ドンウォン
FW カールソン☆


消化試合数が2つ少なかったとは言え、残り6試合で残留圏内まで勝ち点7差で最下位を激走。かつ、シティ、チェルシーマンUとのアウェイを残すって無理ゲーすぎだろと思いきや、そっからの5試合で4勝1分けの猛スパートをかまして楽々残留を決めるという最強の帳尻合わせをやってのけた。毎年同じことやりすぎ。
まず夏の時点でナチ野郎ことディ・カーニオが得体のしれない外国人を買いまくってきたときから「なんかやばいぞコレ」という予感はあったが、案の定ディ・カーニオはリーグ戦1試合も勝てずに9月に解雇。10月に元チェルシーのポジェが後任に就任したが、ポジェが特段の魔法を使ったというわけでもない。だって4月までは負けまくってたし、3月から4月にかけては5連敗とかしてたからね。
とはいえポジェ就任後に内容が上向きつつあったのも確かで、まず大きく変わったのは3センターの導入と耐えてカウンターの徹底。ラーション、コルバックが取り逃したボールは人間掘削機カタモールが削りまくり、それでも抜けてきた相手はブラウン、オシェイのおっさんコンビが対応。ボールを取ったらウィッカムボリーニアダム・ジョンソンの前線に早めに放り込み、ごちゃごちゃでも何でもいいので点をもぎ取るという実利一辺倒の戦い方がラスト1ヶ月で劇的にハマった。ジャッケリーニを含めた前線が終盤に調子を上げてきたのも大きかった。とはいえ毎年それなりの大金を使っちゃあしょうもない選手を大量に獲得し、ヒーコラ言いながら残留するというのはこのチームのお家芸であり、ポジェがそれを変えることができるかは、来年になってみないとわからん。とにかく残留おめでとう。


<Pick up>
アダム・ジョンソン
天才AJはやっぱりできる子だった。やってることは右サイドでボール持ってクロスかカットインしかないのだが、本気出したときのキレと精度はイギリス人随一。何気にスルーパスのセンスもあるんだよねこの人。「シティのときは控えでも代表に選ばれたのに、サンダーランドだと選ばれなくなった」って文句言ってたけど、このまま地元で弱小チームのエース格をやるか、もう一度ビッグクラブに挑戦するか、オファーはあるだろうから、どっちにしても頑張って頂きたい。


◆リー・カタモール
足首削りおじさん、3センターで輝くの巻。ディ・カーニオには規律面の問題を指摘されたかなんかで干されていたが、ナチ公更迭後はレギュラーに返り咲き、中盤で奮闘した。一切の妥協なく動くもの全て蹴り飛ばす姿は若干狂気すら感じるっていうか、普通に頭おかしいよね。有能だけど。






スウォンジー(13位)


<IN>
GK ザブレト
CB J.アマ
SB ミード
CM カニャス
AM ポスエロ
AM シェルヴィー
FW ボニー
FW バスケス
FW リタ
FW エンゴグ☆
FW エムネス☆


<OUT>
GK コーネル
DF テイト
DF バートリー
MF キ・ソンヨン
FW アフスティー
FW L.ムーア
FW シェクター


予算規模を考えれば十分の成績だが、スペイン方面を中心に実力者を補強しただけに、今一つ乗りきれないシーズンになってしまったビルドアップ大王。新加入のボニーとシェルヴィーは高い個人能力を存分に発揮したが、一発で決めに行きたがるシェルヴィーとボールが収まってしまうボニーが攻撃の中心となったことで、これまでのじっくりゆっくりビルドアップが少し急ぎすぎになり、カウンターを食らう機会が増えた印象がある。ここのビルドアップとボール回しってリスクヘッジというか守備戦術の意味合いが強いので、守備に回る時間が増えるとウィリアムズ、チコ、ランヘルは並のDFでしかない。
あと世紀のバーゲンと謳われたミチュが怪我で出られず、世紀の一発屋化してしまったのも痛かった。2月になぜかラウドルップを解任して古参のモンクを監督にしたものの、やることは特に変わらず。
バックパスに備えてFWをDFのマークに回す等、スワンズ式ビルドアップも攻略が進みつつあるので、何かしら変化がないと来期も苦しいかもしれない。しかし破産寸前から地道な経営で立て直してきただけに大規模な補強も望み難く、主力のウィリアムズやデ・グスマンには相変わらず引き抜きの噂あり。勝負の4年目となりそうな予感。


<Pick up>
アンヘル・ランヘル
ビルドアップに長けた長身の右サイドバック。足が速いとかクロスが上手いとかウイイレで評価できそうな項目は至って普通だが、楔が入った際のフォローの角度、オーバーラップのコース取りなど、いちいち気が利いている。多分グレン・ジョンソンフュージョンしたらレアルマドリーで控え位は務まりそう。


ジョンジョ・シェルヴィー
ミチュに代わって中盤の中心に収まったネオナチ顔。平均パスレンジの長さが示すようにボールを通す能力は傑出している。おまけにガタイもあって走れるのでまあホントすごい才能なんだけど、上手くいかないとき露骨に顔に出すぎ。ただ割と内省的というか、即座に他人に当たるというよりは、上手くいかないイライラで気分が落ち込んだ結果プレーが粗くなり、結果的に他人も傷つけてしまうタイプなのがまだ救いか。W杯後のジェラードの後釜として頑張ってください。







ウェストハム(12位)


<IN>
GK アドリアン
CB R.ジョンソン☆
SB ラツ
SB アルメロ
CM A.ディアッラ
CM ノチェリーノ
CM ラザク☆
SM ダウニング
AM モリソン
FW ボッリエッロ☆


<OUT>
DF ポガテツ
DF スペンス
MF オニール
FW シャマフ
FW マイガ



アラーダイスは揺るがない。愛弟子ノーランに放り込み大魔王のキャロル、クロスの名手ジャーヴィスとダウニングというアラダイスサッカーの申し子たちを揃え、ファンからの批判もどこ吹く風で1年間塹壕戦をやりきった。ただし道のりは厳しく、まず例年通りキャロルが怪我で前半戦全休してしまい、C.コールとマイガも頼りにならなかったため、ノーランがとにかく頑張るというどこかで見たソリューションで急場を凌がざるを得なかった。またDFラインはストッパータイプかボンクラしかいなかったため統率が全く取れておらず、年末から年明けにかけては6試合で22失点の大炎上。
さらに冬の補強も1人として当たらず、ジョンソンは早々に見切られ、アルメロは怪我、ノチェリーノとボッリエッロに至ってはなんで獲ったのという稼働率の低さで、今季の冬の王者は多分ここ。
それでも2月にキャロルが復帰し、ジャーヴィス、ダウニングの両翼が揃ってからは調子が劇的に上向き、ノーラン大爆発もあって怒涛の4連勝で早々に残留を決めてしまった。クビになるだのならないだのアラーダイス周辺の噂が聞こえてくるが、個人的にはトニー・ピューリスと並ぶイングランドの良心として、いつまでもこのやり方で頑張ってもらいたいものである。見てる分には楽しいからな。見てる分には。


<Pick up>
サム・アラーダイス
厚顔カバゴリラは今年も健在。チェルシー戦では「19世紀のサッカー」と文句を言われながらもガン引きで守り倒し、試合後には「チェルシーの選手が審判に泣きついたり、恫喝したり、ジョゼが地団太踏んだりするのは最高だったな(ゲス顔)」と一蹴。もう面白すぎである。今日の試合は一つ、緩めでお願いしますわ。


◆ケヴィン・ノーラン
ケヴィン・デイヴィス、ジャイディ、イバン・カンポと並ぶアラーダイス四天王の筆頭。15年塹壕戦をやってきたキャリアは伊達ではなく、ごちゃごちゃした展開でのポジショニングセンスとよくわからんシュートの上手さで今年もチーム得点王を獲得。泥だらけのチームを残留に導いた。もう33だしこの先も代表に呼ばれることはないのだろうが、一度でいいからクラウチケヴィン・デイヴィス、ウォルターズの後ろにノーランが控えるサッカーを見てみたかった気もする。相手はアーセナルが良いな。







クリスタルパレス(11位)


<IN>
GK N.アレグザンダー
GK ヘネシー
CB マリアッパ
CB S.ダン☆
SB マランジュ
SB ハント
DM カンパーニャ
CM バナン
CM ゲディウラ
SM ケベ
SM J.トーマス
SM グランダン
SM パンチョン
SM レドリー☆
SM インス息子☆
FW ゲイル
FW シャマフ
FW ジェローム


<OUT>
DF ラメイジ
MF マロウ
MF モリッツ
MF A.リチャーズ
MF バタフィールド
MF ケベ☆
MF ブレイク☆
MF グランダン☆
FW ザハ
FW ディンダーヌ
FW ドビー☆
FW K.フィリップス☆



男トニー・ピューリスやりきった。開幕当初は攻撃バカのイアン・ホロウェイが監督だったが、9試合で1勝8敗の大惨事だったためあえなくクビになり、11月の終盤からピューリスが就任する。得意の塹壕戦で失点を劇的に減らし、終盤にはチェルシーエヴァートンを含む5連勝でトップ10を狙おうかというところまで順位を上げ、パレス史上初のプレミア残留を達成した。なんせホロウェイ時代は平均得点0.78、失点2.11だったのが、ピューリス政権下では同0.96、1.00である。失点数47はリーグで上から7位。この戦力では偉業としか言いようが無い。
4-4の守備でジェディナク、レドリー(+ディクガチョイ)が中央を固め、ボールを取ったら1人で運べるパンチョン、ボラシーの両翼と肉体派のジェロームでカウンター。文字にするのは簡単だが、必然的に押し込まれる展開でこれを11人に徹底させるのは結構難しい。エティハドでのシティ戦なんて、1-0で負けてるのに6-3-1で引き籠ってセットプレーに賭けてたからね。しかも結構チャンス作ったし。あの計算と割り切りはさすが。あとウォード、ディレイニー、ガビドンの国産守備陣もよく耐えて頑張った。つーかそもそもホロウェイのサッカーをやるには前線の選手が足りなさすぎたね。
多分来年はストークで肩身が狭くなりつつあるクラウチとショットン辺りを呼び寄せて塹壕戦どころか籠城線を試みると思われるので、来年も男ピューリス隊長から目が離せない。


<Pick up>
◆ミレ・ジェディナク
Qolyでコラム書いてるYuukikouhei氏が言っていたが、貧乏人のミヒャエル・バラックという風情のオーストラリア代表。爆裂に潰し合いに強く、ボール扱いもそこそこ上手い上、必要とあらば足首ごと持って行くことも厭わない。SquawkaのランキングでもMF部門堂々の7位、CMFに限ればジェラード、ヤヤ、キャリックに次ぐ4位である。つーかこいつと中盤でやりあってた本田圭祐は偉いなほんと。


◆ヤニック・ボラシー&ジェイソン・パンチョン
ピューリス政権の乏しい攻撃手段を担った両翼。ボラシーがぬるぬるキープしながらスピードもあるタイプで引き出しが割と多いのに対し、パンチョンは中に切り込んでミドル一発の一手だが、分かっていても止め難い強さ速さがある。2人ともビッグクラブでプレーする度量はなさそうだが、一旦ボールを持たれるとマジでめんどくさいことこの上ない。こぼれ球をキープしてあれこれできるテクニシャンを置いたアラダイス時代前半のボルトン(ステリオス、オコチャ)、とにかくクロサーを置いて放り込ませたピューリス時代のストーク(エザリントン、ペナント)に続いて、放り込みサッカーにおけるウィングの使い方にはこういうのもあるのだなと、勉強になった次第。