プレミアリーグ2013/14 レビュー 「世界のコケ方ショー」 vol.1

まだシーズン終わってないけどやっちゃう。しかしタイトルに書いたように、今シーズンはビッグクラブが揃いも揃ってコケまくったので、相対的にどこが一番間抜けじゃないかを決める大会になった感があります。スペインを除いて早々に決まってしまった他国のリーグと比べると見る方からしたら楽しいけど、各チームが分かりやすい弱点を抱えているがために、ヨーロッパでの競争力は落ちてしまったかもしれない。

ちなみに給与ランキングはこちら。昇格したカーディフクリスタルパレス、ハルは含まれておりません。サッカーチームの強さは基本的に給与の高さで説明できるので、*1給与ランキングよりも実際の順位が大きく上ならよくやった、逆なら監督なり戦術なりに何らかの問題があったのだろうと、まあそれくらいのことは言える。


以下、下の方から順番に短評。順位は37週まで終了時点。


カーディフ・シティ(最下位・降格)
(☆は冬の移籍)


<IN>
GK ムーア
CB コーカー
CB アモンダライン
SB テオフィル=カトリーヌ
SB ブレイフォード
SB ファビオ☆
CM メデル
CM エイクレム☆
SM デーリ☆
SM ザハ☆
FW オデムウィンギー
FW コルネリウス
FW ベルゲ☆
FW K.ジョーンズ☆


<OUT>
GK パリッシュ
DF ニュージェント
DF バーネット
MF マクファイル
MF レイルズ
MF コンウェイ
FW ヘルグソン
FW メイナード☆
FW ジュストゥド☆
FW コルネリウス


ウェールズ第2のクラブがプレミア初挑戦も、スウォンジーのようにはいかず、あえなく降格。戦力的にはプレミア経験者をそれなりに揃えていたのだが、とにかくFWの確保に失敗したのが痛すぎた。1トップを期待したコルネリウスが全く期待に応えられず、フレイザー・キャンベルをレギュラーに据えたが、細身のセカンドトップにやらせるには無理があった。
快足ウィングのベラミーとヌーン、技術のあるキム・ボギュン、ファイターのグンナルソンとメデルなど中盤はプレミアでも十分にやれるレベルにあったのだが、もったいない。またDFラインも中央はまだマシだったが、SBはテイラー、ジョン、テオフィル=カトリーヌ、コノリー、マクノートンと全員が2部レベルで穴が目立った。
それでも監督マッカイの必死のやり繰りで降格圏ギリギリで持ちこたえていたが、暴君ヴィンセント・タンの一声でマッカイは首、経験の薄いスールシャールが後任に。ノルウェーから3人連れてきて色々やっていたが、ずるずると順位を下げていった。結局得失点ともにリーグブービーで、あえなく降格。正直この程度の選手しか連れて来られないなら、クラブの人事権を一手に握る大富豪オーナーはデメリットが大きすぎる。


<Pick up>
◆クレイグ・ヌーン
マンチェスター・シティのDFをズタズタに切り裂いたことで一躍名を売ったドリブラーリバプールのアカデミーを首になり、21歳まで屋根職人として働きながらアマチュアでプレーしていたらしい苦労人。なんかジェラードの家の工事もやったらしいよ。スペースがあれば十分オプションとなれる選手なので、来年もプレミアにいるかも。


◆ジョードン・ムッチ
バーミンガム時代に16歳でデビューした早熟のMF。Box-to-Boxの走れる選手で、キックも強くて正確。ある人がTwitterで「ジェイソン・クーマスレベルには育つのではないか」と言っていたが、もっと上まで伸びそうである。




■フラム(19位・降格)


<IN>
GK ステケレンブルフ
GK ストックデイル
CB アモレビエタ
CB ハイティンガ
SB ブリッグズ
SB ズヴェロティッチ
CM D.ボアテング
CM パーカー
CM クヴィスト☆
CM タニクリフ☆
AM ターラブ
AM カサミ
AM デンプシー☆
AM ホルトビー
FW D.ベント
FW ミトログル☆


<OUT>
GK シュウォーツァー
GK ソモジ
DF バーン
DF マノレフ
DF ベアード
DF グリュゲラ
DF A.ヒューズ☆
DF センデロス
MF フリンポン
MF エノ
MF エマヌエルソン
MF S.デイヴィス
MF A.ディアッラ
FW ペトリッチ
FW ルイス☆
FW ベルバトフ


アル・ファイド爺の財力を武器にプレミアを戦ってきた西ロンドンの小金持ちも、13年目にして降格。ここもFWが外れに外れ、エースのベルバトフは絶不調、D.ベントはもはや戦えるレベルに無く、期待のミトログルは試合に出ることすらままならなかった。結果、ターラブの特攻とシドウェルの攻め上がりくらいしか攻め手がなくなり、前掛かりになったところをつかれて面白いように失点を重ねた。また、近年チームを支えてきたハンゲランとヒューズの衰えも痛かった、代役のセンデロスも低調で、アモレビエタはファールを連発。ほんとにターラブとシドウェルとパーカーくらいしか見どころが無かった。あとデジャガはそこそこ頑張ったか。ベテランを揃えた中盤は、それなりにボールを回せたんだけどねえ。
後半戦はマガト大佐を連れてくるも、チームに戦える面子がいないと判断したのか、ズヴェロティッチ、ウッドロウなど若手を重用。抜擢と言えば聞こえはいいが、それで残留できるほど甘くも無かった。新オーナーのシャイード・カーンがどんな人物か知らないが、NFLジャクソンヴィルのオーナーもやっているとのことで、大丈夫かそれ。全然強くなった感じが無いんだけど。


<Pick up>
◆スティーヴ・シドウェル
貧乏人のジェラードが奮闘。守備ではえげつないタックルで相手を潰し、攻撃ではゴール前まで攻め上がってダイブしたりと頑張ったが、報われなかった。この人もレディングのときはキャプテン翼がごときキラキラ感を出していたが、チェルシーで通用しなかったのが惜しかった。とはいえ31歳でこの働きは見事。来年もどっかで仕事はあるでしょう。


◆コーリー・ウッドロウ
誰だお前は。マガト大佐に抜擢された若手FWで、割とボールが持てる左利き。コンパニとデミチェリスにはさすがに子供扱いされていたが、イングランド代表にはいないタイプなので、ちょっと期待しても良いかもしれない。




ノリッジ(18位、降格ほぼ決定)


<IN>
GK ナッシュ
CB アジャラ
SB M.オルソン
CM フェル
SM レドモンド
SM ホナス・グティエレス
FW ファン・ウォルフスウィンケル
FW フーパ
FW エルマンダー

<OUT>
GK スティア
GK キャンプ
DF ティアーニー
DF バーネット
MF フランコ
MF バタフィールド
MF サーマン
FW S.ジャクソン
FW K.カマラ
FW ホルト



フラムとカーディフのせいで目立たないが、得点はリーグ最下位、失点もリーグ18位(下から3番目)。そりゃ勝てねーわと言う話である。前の2つの例に漏れず、ここも最も痛かったのはFWの補強失敗。それなりに点を取っていたエースのホルトを放出し、オランダ代表のファン何とかさんを獲得、さらにスコットランドの得点王フーパーも補強して、その上保険にボルトンで実績のあるエルマンダーまで加えたのだが、笑えるほど外れた。3人合わせてわずか8点ではどうしようも無さ過ぎる。また、攻撃に変化を付けられるフーラハンが絶不調で、右サイドのスノドグラスも点は取ったが昨シーズンまでの輝きは無く。レドモンドのドリブルに頼った攻撃は余りにも貧弱だった。さらに元々弱かった守備に北欧版藤春と名高いマルティン・オルソンなんか加えたもんだから、守備でも堪え性がなくなり、ずるずる失点。新加入のフェル、テティで組んだ中盤センターは悪くなかったのだが。
前の二つもそうなのだが、プレミアはだんだん当たりFWを引けないと即終戦的なコンペティションになりつつある。来年下でどうするかはまだわからないが、ファン何とかさんがフィットする気配が全くないので、早めに放出した方がいいかもしれない。


<Pick up>
◆ネイサン・レドモンド
バーミンガム時代から良いぞ良いぞと言われていたウィンガーがプレミアでもプチブレイク。中にカットインして良し、縦に抜けて良しで、1vs1なら大概の相手には優位に立てる。いかんせん抜いた後の精度はお察し状態なので、得点につながる実効性がつけば、もうちょっと上のクラブでプレーできそうである。まだ20歳だしね。





WBA(17位)


<IN>
GK キャンプ
CB ルガーノ
SM シンクレア
SM ビフマ☆
AM セセニョン
AM アマルフィターノ
FW アニチビ
FW アネルカ
FW ヴィドラ


<OUT>
GK キャンプ☆
DF ハラ
MF トーマス
MF ソウヤーズ
MF アラン
FW フォルテュネ
FW オデムウィンギ―
FW ルカク
FW ロング☆



それしか言うことないのかと言われそうだが、ここもFWの補強に失敗した組。なんせ失点57は8位に入った昨シーズンから変わりなく、得点減がそのままドローの増加・勝ち点の減少につながった。ていうか、ルカクの後釜にアネルカってばかなの?死ぬの?案の定アネルカは2点しかとれず、ナチ礼賛のポーズを取ったとかで冬にはクビ。さらに点は取れなくとも一定の働きは保証してくれるロングを放出し、得点はセセニョン、アマルフィターノらMF陣に頼る形になってしまった。オルソンを中心にDFはそこそこ頑張ったが、点が取れない前線を支えられるほど盤石でも無く、ノリッジの崩壊に助けられて何とか残留。下位チームとしては随一の中盤がいるだけに、来年は前線を何とかしないともったいないことこの上ない。


<Pick up>
◆サイード・ベラヒーノ
脆弱な前線を支えた若手FW。なんか身のこなしが気持ち悪いくらいに柔らかく、狭いスペースでも足を振り抜いてすぱーんと決めてしまう。マンUを破った決勝点は個人的に褒めて遣わしたいところである。ま、そのあとのマンUの崩壊っぷりがアレすぎて若干勝ちが下がってしまったが。


◆クラウディオ・ジャコブ
中盤の底で相手の足首ごとボールを刈り取り、チェックを受ければ大げさに痛がり、ボールを持ってもそこそこ上手いというアルゼンチン全開のボランチ。まさしく貧乏人のマスチェラーノである。多分アルゼンチン国内には量産型ジャコブみたいなのが50人はいるんだろう。なんていうか、個人的にサッカー文化の厚さを感じてしまう選手。ただ平均パス距離17m(チーム全体では20m)が示す通り、パス捌きにはあまり期待できない。近くの味方に渡すのは上手いけどね。




■ハル(16位)


<IN>
GK ハーパー
GK マクレガー
CB C.デイヴィス
SB フィゲロア
SB ケビー☆
CM ハドルストン
CM リヴァモア
FW サグボ
FW グレアム
FW イェラヴィッチ☆
FW ロング☆


<OUT>
GK オクスリー
GK ストックデイル
DF ドーソン
DF ホブズ
MF エヴァンズ弟
MF ケアニー
MF ゲド☆
FW カレン
FW シンプソン



ここもFWには苦労したが、中盤とDFの補強が当たり、見事残留。9月以降は一度も降格圏に落ちなかったのは立派。もともと固かったDF陣には元代表のデイヴィスとフィゲロアが入ったが、このデイヴィスが大当たり。なんせSquawkaのランキングではコンパニ、ジャギエルカらを抑えてCB部門10位である。中盤ではハドルストン、リヴァモアの元スパーズコンビが攻守に活躍。潰しとつなぎが両方できる二人が中盤の底にいたのは大きい。攻撃陣は頼りなかったが、アルコ、イェラヴィッチ、フライアットなど特徴の違う選手が代わりばんこにちょこちょこ活躍し、さらにイギリスでは相対的に戦術家なブルースがちょこちょこ工夫を加えた結果、なんとかシーズンを乗り切った。個人的にはデイヴィス、アルコ、フライアットらかつて期待されながら腐りかけていた若手が良いところを見せたのが嬉しい限りである。


<Pick up>
◆カーティス・デイヴィス
カペッロ政権下で代表にもちょこっと呼ばれたかつての期待の星が、ようやく本領発揮。昔はスピードと高さだけでライン統率とかさっぱりできなかったのだが、成長したよねえ。当然チームMVPも受賞して、30歳を前にしてキャリアの頂点に達しつつある。


◆アーメド・エルモハマディ
眉毛が男らしすぎるエジプト人SB。選手としてもそれなりに安定した良いサイドバックだが、とにかくこの人陽気すぎ。去年の昇格決定後は他の選手の20倍くらいはしゃぎまくっていた。これまで俺がミドとかザキとかのせいでエジプト人に抱いてきたとっつき辛い変人イメージを一掃しそうな勢い。




アストン・ヴィラ(15位)


<IN>
GK スティー
CB オコレ
SB ルナ
SB ハットン
SB バートランド
SM バクーナ
SM トネフ
FW コザク
FW ヘレニウス
FW ホルト☆


<OUT>
GK マーシャル
DF R.ダン
DF リーハイ
DF ウィリアムズ
DF スティーヴンズ
MF ホルマン
MF バナン
MF アイルランド
MF ドーキンズ
MF ペトロフ
MF D.ベント



ランバート先生の苦悩は続く。若手ばかりの就任1年目を何とか残留で乗り切り、今年はトップ10だ!と思っていたところだろうが、エースのベンテケが怪我するとどうにも打つ手が無かった。守備は昨シーズンの同時点から▲9点と大きく進歩したのだが、ベンテケ以外の前線が頼りなさすぎ。アグボンラホーは相変わらず全速力で走ることしか頭に無く、ヴァイマンは賑やかし専門、新加入のヘレニウスとコザクも期待外れで、競合相手に5バックにしたのは良いけどカウンターの破壊力が無さ過ぎてサンドバッグという光景を何度か見た。あと攻撃に変化を付けられるアイルランド、バナンを揃って放出した影響もある。デルフ、ウェストウッド、バクーナ/エルアーマディの中盤はそこそこソリッドなんだけど、バカ正直すぎるんだよね。まあシティやチェルシーに勝ったりリヴァプールに勝ったり、そこそこ効率よく勝ち点を稼いではいるのだが。なんかチーム全体が暗い。



<Pick up>
◆ブラッド・グーザン
ケイシー・ケラー、ブラッド・フリーデルの系譜を受け継ぐ、苦労が報われないアメリカ人GK。鈍重なDF陣、点を取ってくれない前線に耐えながら、貴重なセーブを連発した。ただ前の2人ほどスーパーではないので、だいたい後半半ばくらいで点取られて轟沈する。どうしてこうもアメリカ人GKというのは報われないのだろうか。


◆ファビアン・デルフ
亡国リーズの忘れ形見がようやくプレミアで本領発揮。ランバートにタックルができないと批判されていた守備面も向上し、もともとの推進力も加えて、穴が少ないMFになった感がある。


◆アンディ・ヴァイマン
オーストリア代表のセカンドトップ。もうほんと、「機動力」をそのまま人間にしたような男だが、それ以外には何もない。ベンテケを欠いた前線で、それなりに奮闘。しかしこないだのシティ戦で5−4−1の1トップを張らされていたのは、何というか西部戦線異状なし、我が軍に増援の見込みなし、月月火水木木木木みたいな悲壮感が漂っているのであり、これが次代のエースってオーストリアもきっついなあ感満載。





続く。

*1:ちなみに国が違うと経済も違うので、国際的な比較は簡単にはできない。こらそこ、なんでマンチェスターシティはCLで早々に負けたんですかねえとか言わない。