2015/16シーズン半期レビュー
無失点の5連勝と華々しいスタートを切ったが、結局いつものペレグリーニ・シティであることが判明。
定期的に大爆発炎上する守備と、定期的に大爆発炎上させる攻撃がトレードマークだが、後者は最近ただの弱い者いじめになってきているのが気に係る。
得失点と勝点で見ても、過去4年の平均から見ればむしろちょっと悪いくらいである。逆に言えばそれでも首位なのね、ちう気もする。
(14節までの各シーズンのスタッツ推移)
個人的には昨シーズンより内容としては多少マシだと感じていて、それは主に「全く回収する気が無いロングボールのこぼれ球」とか、「外房の海岸沿いばりに開けたスペースを全力放置」とかの素人目に見ても大問題でしょうという部分の放置が減ったというところから来ているのだと思う。
もちろん場面として無くは無いし、結果としては同じ数の失点を食らっているのだが。あとボール保持時の距離感の悪さは多少改善された気がする。
あと、昨シーズンも多少やっていた、というかまあ贔屓目に見ればやろうとはしていたショートカウンターは、前プレ魔人フェルナンジーニョの復活とデルフの獲得もあって、そこそこハマっている。主に2点目取るまではだが。
2点取ると恐ろしく気が抜け、かつ相手の変化に合わせることもできないので、下位チームは下手に5バックで守り倒そうとして終了間際にこじ開けられるより、2点取らせてから同点狙いに切り替えた方がいいんじゃないだろうか。
これまでよりは多少守備方面で相手に合わせた柔軟なアプローチを取るようになり、代表例が最近やり出した4-1-4-1であるが、リヴァプール戦では「激しく前プレされると泡を吹く」、サウサンプトン戦では「ヤヤが疲れてきたタイミングでフェルナンドを入れないとザル化」と問題が即バレ。
4-1-4-1に限らず、とにかく試合中の相手の変化に対応する動きが鈍いというのが大きな問題だ。別に選手交代を早くせえとばっかりは思わないが、昨シーズンからずっと、どうもペレグリーニは守備のケーススタディをあまり仕込んでいないということが明らかになっているので、後半戦も恐らく同じ事態が起こるだろう。
目下延べ怪我人数1位のクライシスを乗り越えられれば火力で何とかなるかもしれない。ならなければ優勝は難しそう。ちなみにサウサンプトン戦の後半は芸術的なスペース管理が行われていました。前半は良かったんだけどねえ。
開幕前はやれ4位だ5位だとの予想が飛んだが、さすがにスターリング、オタメンディ、デブライネと獲得し、かつ主力の大半を残して2位でもOKですではお天道様が許すまい。さてどうなるやら。
私はジェラードが結構好きで、中学生時代には00/01シーズンのサウサンプトン戦でジェラードが決めたミドルを良く真似したものだった(当然、一本もそれらしきものは打てなかった)。ついでに言えばウリエ時代のメンバーも割と好きだった。
のだが、ご存知のようにジェラードと言う男はリーグに関してのみ喜劇的な悲劇を被ってしまう運命にあった。
具体的には13/14のリーグ戦終盤や、昨シーズンのまんゆ戦やストーク戦のことだが、なんかこう、「我が社の最重要顧客だからくれぐれも失礼がないように!」と言い残した秘書が客の椅子にブーブークッションを置いているというか、無礼を承知で言えば、「えっと、これツッコんじゃダメなやつでしたっけ」みたいなタイプの悲劇がこの上なく大事な局面で巡ってきてしまう人だった。
何が言いたかったかというと、ジェラードの離脱がきっかけではないだろうけど、折しも彼の退団とクロップの就任を機に、そういったコメディーとは無縁のクラブになったのかもしれないなという感じはする。めっちゃ強いもん、クロップ来てから。
ちょうど友人とクラシコを見ていたので個人的には先日のシティ戦をきちんと見ていないのだが、クラシコで盛り上がるスポーツバーの一角、隅っこのモニター1つだけで流れていたシティvsリヴァプールで、マンガラが泡を吹いて倒れているのは見た。デミチェリスも倒れていたかもしれん。ヤヤトゥレは漏らしてた。
組織された前プレに対抗する術を持たず、かつハイテンポの試合に弱いというペレグリーニ・シティの弱点を完璧に突いた手腕、さすがクロップである。
シーズン序盤のもたつきで今シーズンはCL圏内確保が現実的な目標かと思われたが、12月3日時点で首位とは6ポイント差。優勝は十分に射程圏内だと思う。
今シーズンの目標として優勝を狙っていくべきだという理由はもう一つあって、まずリヴァプールは上位陣の中で比較的戦力維持が厳しいということ。
残念ながら順位、参加するコンペティション、資金力の面で国内でもトップティアとは言い難いので、食物連鎖の上位クラブからの引き抜きを被りやすいところがある。例えばアロンソとか、トーレスとか、スアレスとか。コウチーニョにバルセロナが興味、みたいな話は十分ありそうな気がする。
もちろんアグエロやアザールがマドリーとか、英国内のクラブはどこも程度の差はあれ直面する問題ではあるのだが。
また、資金力不足が戦力維持にもたらす問題のもう一面としては、ファンドが劣るので狙った選手が思うように獲れなかったり、ギャンブルになりやすかったりすることだ。
例えば(調達方法には色々異論もおありでしょうが、まあ比較として怒らず聞いて頂けると)シティのFW獲得を見てみると、アデバヨル、テベス、ジェコ、アグエロ、ネグレドといった各リーグのトップスコアラーかそれに近い水準の選手を£20Mから30Mかけて獲るので、効率は多少悪くても、ピッチ上の結果については外れが少ない。
一方リヴァプールは単純なファンド不足もあろうし、それが故に「値段の割に結果を出す選手を獲る」という方針があるのかもしれないが、概ね£10M前後で少々格が落ちる選手を獲る。結果としてピッチ内でも大外れのパターンが増える。例えばバロテッリとか、アスパスとか、ボリーニとか。
10/11から14/15の5シーズンに獲得したFWを比較してみると、シティは移籍金に£136.4Mかけて245得点。リヴァプールは£92.5Mを投じて155得点。スタリッジとスアレスと言う稀代の大当たりを含めても、移籍金当たりの効率ではシティに劣っている(シティは£1M当たり1.80得点、リヴァプールは同1.68得点)。近年に限らず、リヴァプールは偉大なストライカーを自前で排出したり(ファウラー、オーウェン)、移籍市場からとんでもない大当たりを引いてきたりする(トーレス、スアレス)一方で、大エースの後釜探しは概して上手くない。※得点は10/11から14/15までの累積。
(source:Transfermarkt, Wikipedia)
もう少し経営寄りの話をすると、売上規模の不足はほぼ20年来のリヴァプールの宿痾だ。
例えば97/98シーズンのまんゆの売上規模は、リヴァプールの1.93倍。その後、04/05シーズンには1.36倍まで迫ったが、2014年時点ではまた1.69倍まで差が広がっている。自分の1.7倍大きなビジネスをしている相手に勝つのは結構大変である。
前にも言ったが、世界に冠たるブランドを持ちながら、ピッチ上の成績につなげる効率が低い、もっと具体的に言うと監禁能力が低いのは非常に勿体ない。
(source:Guardian,Deloitte Football Money League)
もちろん現経営陣移行後(テイクオーバーが2010年暮れなので、11/12シーズン以降)は前述のまんゆとの差も縮まりつつあるし、まんゆがCL出場権を逃したおかげで、2015年の決算ではさらにその差が小さなものになるはずだ。とは言え上に書いてきた懸念は短期的に解決するのが難しい問題なので、できれば今シーズン勝っておきたいところ。しかし優勝したら偉業だなあ。クロップの銅像くらいは簡単に建ちそうだ。
・・・・と思っていたんだけど、最近は無理にタイトルを狙わなくても十分なのではないかと言う気もしてきた。
長くなるから詳しくは書かないが、無理に軍拡競争についていかなくとも、Profitableなビジネスを維持し、地元のファンに密着し、自他のスカッドの巡り合わせで20年から30年に一回優勝できれば、というのもそれはそれで立派な事業モデルである。ファン層や現状のポジションを考えると無理のない道でもあり、その観点から言えば今のところは素晴らしい運営手腕だ。逆に言えばその点シティは難しいところなのだが。
「今年は一味違う」とはボジョレー・ヌーボーとアーセナルのお決まりだが、得失点と勝点で言えばさほど大きな差は無い。過去4シーズンの平均に比べれば多少良くなったくらいだろうか。このチームの課題は何よりもシーズン通した継続性なので。
折しもコシエルニ、サンチェス、コクランといった主力中の主力に怪我が発生。ここから年明けにかけての過密スケジュールを無事に乗り切れるかどうかが問題だが、ごめんやってるサッカーはよくわからない。見てない。とは言え、戦術の幅がシティより広いのはアドバンテージだろう。ジルーが20点決めれば違う結果が待っていると思われる。
(14節までの各シーズンのスタッツ推移)
ちなみに「効率的に獲得勝点を高めるにはGKとCBに投資すべき」という話が最近出てきていて、その点でチェフに投資したアーセナルは先見の明がある、ましてや手持ちキャッシュに余裕があることを踏まえると、ファンドと頭脳を手にしたアーセナルは来シーズン以降のタイトルレースを主導するのではないか、という説があったが、どうだろうね。
チェフはまあ、良いGKだと思うが、チェルシーから買ってるやないか、みたいな。遅れすぎると先見の明があるように見える例だと思ったのだが。初めてヴェンゲルがまともなGKを買った、という文脈で捉えられるケースだと感じたのですけど。
まあそこが可愛いんだけどね、ヴェンゲル。ファーガソンも含めて、その辺は可愛げがあった。タイービとかさ。個人的にはシーマンの控えをやっていたマニンガーが好きでした。
ペレグリーニ就任以来、「シティが見るからに気合いが入っている(ビビっているとも言える)」試合はモウリーニョ・チェルシーだけなように見える。いや、失礼な言い方だとは思うんですけど、感想としてね。それで痛い目いっつも見るからね。
それで3-0でノしたときは大層嬉しかったのだが、その後のチェルシーの不調でやや価値が薄れてしまった気がしなくもない。モウリーニョの人格にクラブのPRも合わせすぎない方がいいと思うんだけどね。
移籍市場が閉まる直前に獲得し、モウリーニョが「ぶっちゃけ俺は知らん」と言ったというCBパピ・ジロボジは知り合いが「良い選手かどうかは置いておいて、とんでもないやつだ」と言っていたので、見るのを楽しみにしている。現状はさほど信頼がおかれていないようですけど、ズマとジロボジのCBコンビは新大陸の1つや2つは見つけそうな気がする。
見てないし、書くことも特にない。