プレミアリーグ2013/14 レビュー 「世界のコケ方ショー」 vol.4

優勝したぜオラァ。いよいよトップ5。長かった。



エヴァートン(5位)

<IN>
GK ジョエル
CB アルカラス
CM マッカーシー
CM バリー
AM マッゲイディ☆
FW コネ
FW デウロフェウ
FW ルカク
FW ゲイェ
FW L.トラオレ☆


<OUT>
GK ムハ
DF P.ネヴィル
DF ハイティンガ
DF ダフィ☆
MF フェライニ
MF ヒッツルスペルガー
MF ジュニオール
FW アニチビ
FW マカルニー
FW イェラヴィッチ☆


サウサンプトンと並ぶイギリスの良心。15年続いたモイーズ政権を引き継いだマルティネスは、難しい仕事を完璧にやってのけた。モイーズ時代は基本的に固く4-5で中盤を固めてのリアクションが中心だったが、マルティネスはもうちょいモダンな感じに微修正。両翼のミララスネイスミスはより中央裏を狙って、サイドの幅はベインズとコールマンの両サイドバックがカバー。攻守のバランスは職人バリーとハードワーカーのマッカーシーが収支を合わせた。結局得点はリーグ6位、失点は3位。あれだけ攻撃的な性格を強めながら、きっちりバランスを取ったのは見事と言うしかない。もちろんジャギエルカ、ディスタン、ハワードのおっさんトリオも良かったけどね。


<Pick up>
◆シェイマス・コールマン&レイトン・ベインズ
プレミア最強のSBコンビがサイドを蹂躙。シティのコラロフサバレタも攻撃力では迫るものがあるが、守備力まで含めるとベストはこのコンビか。もともとベインズってウィガン時代から守備が良いっていう評価だったんよね。コールマンはスピードだけの突撃野郎だったが、ボール扱いやクロスの精度が良くなった。もともと走力はベイルに迫るもんがあるので、もしかするとそのうち本格的にポジションが前に上がるかもしれない(ちょっと前もMFやってたけど)


ギャレス・バリー
フェルナンジーニョの補強でシティでの居場所を無くしたが、堅実な仕事っぷりで躍進に貢献。もはや足の遅さはしゃーないが、早い寄せ、そこそこ正確なパス捌きは健在。なによりチームのために一歩引いて守備に走れる姿勢が素晴らしい。マンチーニも重用しただけある。関係ないけど、前から思ってたがウィレム・デフォーに似てるよね。





アーセナル(4位)

<IN>
GK ヴィヴィアーノ
DM フラミニ
DM フリンポン
CM シェルストレーム
AM エジル
FW サノゴ
FW パク・チュヨン
FW 宮市
FW ベントナー


<OUT>
GK マンノーネ
DF スキラッチ
DF イグナシ・ミケル
MF ミード
MF アルシャーヴィン
MF イーストモンド
MF コクラン
MF C.ヘンダーソン
MF フリンポン☆
FW ジェルヴィーニョ
FW パク・チュヨン
FW アフォービ☆



コケ芸その4:お約束。出だしでコケにコケた過去2シーズンの反省を活かしたのか、序盤からお家芸の流暢な攻撃を武器に首位を快走。スコアラーとして覚醒したラムジー、大枚はたいた甲斐があったぜエジルの活躍もあり、年明けまでタイトルの望みを抱かせた。

が、12月にシティとやったときからその気配はあったのだが、ピュアに攻撃しすぎ。アンカーが務まるのがフラミニしかいないにも拘わらず、サイドバックは上がるわ中盤(とくにサイド)はフォローしないわでビッグクラブとの対戦ではカウンターを決められまくり、シティに3-6、リヴァプールに1-5、チェルシー戦に至っては0-6と大敗を重ね、首位戦線から脱落していった。攻撃でカバー出来てりゃまだいいのだが、FWのジルーはアグエロスアレスほどスーパーではなく、エジルも後半戦は調子ダダ落ち。ポドルスキの復調でなんとかCL圏内は死守したものの、今年も寂しい1年となってしまった。
とは言え、ここまで言っといてだが、ヴェンゲルをクビにするべきかと言うとまたそれも難しく、スタジアム建設の負債をコツコツ返しつつ、報酬が大きいCLをしっかりものにし続ける監督を見つけるのは至難の業。マンチーニなんて、アラブ人が払うと思ってなんでもほしがるからな。ヴェンゲルをクビにしたは良いが、マンUみたいになる可能性も十分にある。まあ、管財人が入って今や3部だか4部だかまで落ちてしまった代わりに、大量補強でFAカップを取ったポーツマスみたいな道もあるっちゃあるのだが。


<Pick up>
バカリ・サニャ
コールマンやサバレタのような攻撃力は無いが、安心して右サイドを任せられるサイドバック。困った時にはハイボールの的になれるのも良い。いやあ、ほんとに良い選手ですよね。え?出ていく?こいつも?そりゃあ大変ですな。



オリヴィエ・ジルー
綺麗なポストプレー、エリア内での強さ、顔と三拍子そろっているようで微妙に一流半な感じがとてもアーセナルらしくて良いと言ったら怒られるでしょうか。今年はPK1つで16点と頑張ったが、どうにも窮地を任せられる気がしない。そのくせ浮気はするし。彼が控えをやってるくらいになると、タイトルも現実味を帯びてくるんだろうけどね。中盤のアタッカー陣が上手いのはわかるが、そればっかりじゃなかなか優勝は厳しい。





チェルシー(3位)

<IN>
GK シュウォーツァー
GK ブラックマン
CB カラス
CB ズマ☆
CM ファン・ヒンケル
CM エッシェン
CM マッケクラン
CM チャロバー
CM マティッチ☆
AM ウィリアン
AM デ・ブルイネ
AM サラー☆
FW シュールレ
FW エトオ


<OUT>
GK ターンブル
DF P.フェレイラ
DF バートランド
MF ロメウ
MF マルダ
MF マリン
MF べナユン
MF デ・ブルイネ
MF マタ☆
MF エッシェン
MF マッケクラン☆
MF チャロバー☆
FW モーゼズ
FW カクタ☆



コケ芸その5:強きをくじき、弱きを助けちゃう。帰ってきたジョゼ・モウリーニョはやっぱり策士で、バカみたいに攻めてくるシティ、リヴァプールアーセナル相手には6勝0敗、13得点2失点と無類の強さを見せた。1月のシティ戦では、穴の多さを得点力でごまかしていたシティに対し、「実はさほど繋げないDF陣を前プレで狙い撃ち」「マティッチ、ルイス、ラミレスの筋肉トリオでヤヤとシルバを封殺」「ボールを回収したらSBの裏に流し、アザールとウィリアムで押し込む」という流れでシティを圧倒。あんときはマジでびびったわ。
一方でFW陣の頼りなさもあり、相手に引き倒されると崩すことができず、アーセナルを爆殺⇒パレスに敗戦、トッテナムを粉砕⇒ヴィラに敗戦、リヴァプールを封殺⇒ノリッジに引き分けと要所要所でコケまくり、弱気を助け、強きをくじくロビンフッド精神で最後は力尽きた。
とはいえ、優勝の望みがほぼなくなったリヴァプール戦でドン引きに引き倒し、カウンターで仕留めてジェラードの悲願をブチ壊すという底意地の悪さはさすがジョゼ。自分たち相手にドン引きで引き分けに持ち込んだウェストハムを「19世紀のサッカー」と批判しておいてからのこれである。来年ジエゴ・コスタとか来たら本気で隙がなくなりそうなので、あのドヤ顔がトロフィーを掲げる日もそのうち見ることになってしまいそうな予感がしている。あの、全体としては褒めてますので。好きですので。


<Pick up>
◆ネマニャ・マティッチ
若かりし頃にチェルシーに青田買いされるも、出番が無くポルトガルへ。ベンフィカでの活躍を持って冬に復帰を果たすと、中盤の底でレギュラーに定着した。足元も上手いのだが、肉体的に強すぎ。ラミレスとルイスの助けがあったとはいえ、ヤヤトゥレとまともに戦えるMFってそうそういないよ。こんなんが中盤で構えてたら、そら崩せないわ。



アンドレ・シュールレ&ウィリアン/エデン・アザール
前者2人はモウリーニョ好みの走れるサイドアタッカー。きっちり守備に走りつつ、ボールを持っても良し、ゴール前に飛び込んでも良し。かつてのダフやロッベンジョー・コールに似た役割。どうでもいいけどシュールレモリッシーに似すぎな。アザールはドリブルが病的にキレており、左サイドからのカットインは誰も触れすらしない状態に達していた。が、守備するとかしないとかでモウリーニョと揉めているという噂で、これはロッベンさんコースではないかという気が。





リヴァプール(2位)

<IN>
GK ミニョレ
CB コロ・トゥレ
CB M.サコ
CB イロリ
SB A.シソコ
FW L.アルベルト
FW アスパス
FW モーゼズ


<OUT>
GK グラーチ
GK レイナ
DF コーディ
DF キャラガー
DF イロリ☆
MF シェルヴィー
MF ダウニング
MF O.アサイディ
FW スソ
FW ボリーニ
FW モーガン



コケ芸その6:ホントにこけた。いや、よく戦った。ほんとによく戦った。シーズン前はまずCL復帰が第一目標であり、選手層の薄さを考えればそれすら容易ではなかったが、スアレスの大爆発、スタリッジヘンダーソンフラナガンら若手の成長、ジェラードの復活と全てが上手くハマり、最終戦まで優勝の望みを残すという望外の結果を残した。やってるサッカーも見た目麗しく、スアレススタリッジスターリングの3トップはボールさえ来れば簡単にチャンスを作ったし、コウチーニョを中心とした中盤のパス回しも見事だった。ていうか、この3トップ、なんかもう、気持ち悪い。速すぎ。上手すぎ。カウンターの速度と正確さが見たことないレベルに達してた。
それだけに、シティに勝ったあとの大失速が悔やまれる。ジェイミー・キャラガーが再三再四指摘していたが、シュクルテルとサコのCBコンビは一旦押し込まれると前に出る力がなく、相手の侵入を許しすぎた。ピンチが多けりゃ失点も増えるのが常で、失点数は上から8位の49。大爆発炎上を繰り返したトッテナムと2つしか差が無く、そのツケが最後に回ってきてしまった。
とはいえ、最初に書いたようにあくまでもCLが目標だったシーズンで、この結果は大したもの。シティ戦の前半のように、好調時はマジで手がつけられなかった。財務面が気になるところだが、少なくともピッチの上では未来は明るい。


<Pick up>
ルイス・スアレス
人間であることをやめたウルグアイの狂犬。昨シーズンの噛みつき事件で序盤5試合出られなかったのだが、復帰するとFKにミドルにと得点を量産。アグエロみたいに怪我するとか、バロテッリみたいに定期的に不貞腐れるとかそういう波が全くなく、相手のDFが可哀そうなレベルで殺戮を繰り広げた。押され気味の展開になるとダイブしたがる癖は相変わらずだが、ダイブを繰り返した揚げ句に勝ったのに主審に文句をつけるとか、もうメンタル強すぎ。


ジョン・フラナガン
フラナガンと聞くとガンダムを思い出してしまうのは私だけでしょうか。ホセ・エンリケの怪我を埋めるべく左サイドのレギュラーとして駆り出され、20歳そこそこにしてよく頑張った。相手がボールを持った時のタックルのタイミングが抜群に上手い印象で、普通のDFが足を出したら避けられて終わりな状況でも簡単にボールに触ることができるという地味だけど得難いスキルの持ち主。ただこの10年、オツェモバーとか、ロシーニアとか、俺が見込んだサイドバックは例外なく大成していないので、リヴァプールファンにはもう謝っておこうと思う。すまん。





マンチェスター・シティ(優勝)

<IN>
CB デミチェリス
CM フェルナンジーニョ
SM ナバス
FW ネグレド
FW ヨヴェティッチ
FW ナイムリ


<OUT>
DF コロ・トゥレ
DF マイコン
CM ラザク
CM バリー
CM ヒューズ☆
MF シンクレア
MF ルスナーク☆
FW バン
FW テベス
FW グイデッティ☆


コケ・・・なかった。ぎりぎりで。ほんとぎりぎりで。風雲児マンチーニをペレグリーニに挿げ替え、フェルナンジーニョデミチェリス、セビージャコンビと豪華補強でシーズンを迎えたが、トゥレ、コンパニ、シルバら主力に頼る部分が大きく、ボールの奪い方とかビルドアップとかその辺が組織的に整備されていないので、アウェイでは不安定な試合が続いた。年末から年明けにかけては大量得点勝利が続いたが、ジョゼには弱点を完璧に見破られ、バルサには力負け。正直年明け以降でホントに上手くいった試合って、FAカップチェルシー戦とマンチェスターダービーくらいではなかろうか。リヴァプールとサンダランドとやったあとは本気で終戦だなと思った。
とはいえ徐々にフィットしてDFラインを統率したデミチェリスネグレドが調子を落とした終盤に貴重な得点を決めたジェコ、中盤でリスクヘッジに奔走したハビ・ガルシア、黙々と自分の仕事を完遂したミルナーら脇役陣の頑張りに支えられ、リヴァプール戦の敗戦以降は主力が揃って奮起。4勝1分けで駆け抜け、物量の差で押し切った形となった。
そもそも人件費の比較からしたらもっと余裕をもって優勝を決めておけという批判もあろうし、マシになってきたとはいえ相変わらず個人依存が強い守備、自分たちより攻撃力で勝る相手に対するBプランの欠如、忍び寄る主力の高齢化など来期も不安はある。が、ペレグリーニ就任後はクラブの雰囲気も良いようだし、U-11、U-18が揃って優勝するなどユース年代の整備も進んでいる。来年も再来年もタイトルを取れるよう、頑張ってください。お疲れ様。


<Pick up>
ヤヤ・トゥレ
フェルナンジーニョハビ・ガルシアに支えられ、自慢の攻撃力をフルに発揮した人間戦車。シティの苦しいときのソリューションはだいたい「レベルを上げてトゥレで殴る」である。最近1試合で必ず1回は足を引きずるようになったのが気になるが、あと2年は働いてほしいところ。


フェルナンジーニョハビ・ガルシア
そのトゥレを支えた陰のヒーロー。中盤の底でこぼれ球拾いに奮闘した彼らの働きがあってこそ、得点リーグ1位、失点2位のバランスが保たれた。とくにガルシアは昨年さっぱりフィットせずスピードの欠如を指摘されてばかりだったが、今シーズンはフィジカルコンディションが良くなったのか、単純に寄せも速くなり、競り合いで負けるシーンも減った。最終版ジーニョを差し置いてレギュラーに定着したのも頷ける。ていうか、もっとガルシア使いましょうよ。バルサなんて、まともに当たったって中々勝てやしないんだから。


エディン・ジェコ
ポストプレーは明後日の方向、キープはままならず、そこそこ点は決めるから何とか許されていた木偶の坊が、ペレグリーニの指導で大きく成長。しっかりボールを収めて味方に預けるジェコなんてもうジェコじゃない。あと守備の意識が格段に良くなり、苦しい状況で味方を助けるランニングが散見された。そしてエリア内では最後まで本領を発揮。相変わらずミドルはさっぱり得点の匂いがしないが、良いボールさえ供給されればボールをねじ込む力は、最後の最後で物を言った。


ダビド・シルバ
相変わらず削られまくったが、出れさえすれば確実なクオリティを保証。もうほんと、ドン引きの相手をじっくり料理する感じとか、ミルナーサバレタの忠犬コンビの使い方とか、これがレギュラー保障されてないってスペインすごすぎ。




以上。最後にTeam of the seasonを。

GK:ハワード、マーシャル、シュチェスニー
CB:ケイヒル、テリー、コシェルニ、C.デイヴィス
RB:コールマン、サバレタ
LB:ベインズ、ショウ
CM:ヤヤ・トゥレ、ジェラード、ジェディナック、ヘンダーソン
AM:シルバ、アザール、ララーナ、カソルラ
FW:スアレスアグエロランバート、ボニー



来年も楽しみにしとるわ!