ストライカーの売買と評価に関する小話


このような記事が出ていた。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150118-00272442-soccerk-socc#_=_


曰く、アブダビ化以来シティが行ってきたFWの獲得は”乱費“で、”費用対効果は驚くほど低い“そうなのである。
記事によれば

クリスティアーノ・ロナウド(約130億円)とガレス・ベイル(約130億円)、3位のルイス・スアレス(約111億円)を獲得しても、十分お釣りがくる

とのことだが、今までに472億円使ってなかったらそもそもロナウドやベイルを獲得できるレベルのクラブになって無い気がするんですけど、という話は置いておいて、シティにそのようなイメージを持つ人が多いのは事実であろう。
今回はFW獲得における“費用対効果”を検証するとともに、ビッグクラブのFW獲得戦略について評価する基準をいくつか提案してみたい。してみたいだって。うひゃー。





“投資対効果が低い”“乱費”の意味するところとしては、そもそもの投資額が群を抜いて大きいということに加え、(1)投資金額の割に獲得したFWが対して活躍していない、(2)大金を投じたFWがすぐに退団する、(3)FW獲得に投じた資金が無駄になっている、の3点に分解できよう。できると思うんです。多分。
言い換えればリターンが少ない、償却できていない、リソースの減少に繋がっている、と言うこともできる。





(1)投資金額に対するリターンが小さい?


リターン、すなわち選手の活躍度合いを数値化することは難しいが、幸いなことに今回はFWの話なので、単純に得点数が指標として使える。
そこで今回は“選手を獲得した際の費用=移籍金”と、“在籍中の得点数”を対象とする。ちなみに選手自体をコストパフォーマンスで評価しようと思えば給与額を使うべきと思われるが、今回は移籍市場におけるクラブのパフォーマンスを評価したいので、移籍金を用いる。
対象はシティが“アブダビ化”した2008/09シーズン以降に獲得した選手とその移籍金で、得点数は2013/14シーズンまで。



はい。




シティの「移籍金£1M当たりの得点数」は1.22。百万ポンド使うごとに、1.22点得られている計算になる。
チェルシーよりは良いが、その他の4チームよりは低い。6チームの単純平均は1.75点/£1Mなので、群を抜いて投資対効果が悪いとは言えなさそうである。
また、シティファンとして喜ばしいのは、シーズン別に獲得した選手のゴール数と移籍金を比べると、年々効率性が改善していることである(通算ゴールが対象になるため、2013/14シーズンの評価は悪くなりやすい)。



すなわち、移籍市場における戦略策定およびそのデリバリーの精度が年々高まっているものと考えられる。
ジョーとかサンタクルスとかその辺に&20M近く突っ込んでいた頃とは違うのだよ。





(2)FWの入れ替わりが激しい?


結論から言えば、実働で見ればそんなことはない。
下記は、(ローン等に出されず)実際に各FWがそれぞれのクラブでプレーした実働シーズンの平均を見たものだが、意外なことにシティは長い方なのである。
(実働で見るのは、ローン放出での大規模な収入が見込めない以上、実際に各クラブでプレーしない限り、投資額の償却にはなっていないと考えられるため)



これは即戦力を買っているため、どの選手も基本的に1回はフルシーズンを戦わせていることが影響していると思われる。
反対にアーセナルは若い選手を先行投資的に買うことが多いため、ローンの連続で結果的に実働シーズンが短くなる例がある。例えばジョエル・キャンベル。
ただし、詳細は後で見るものの、ジェルヴィーニョパク・チュヨンポドルスキ等明確に投資対効果が高かったと言える選手が少なかったために、回転が速くなっている一面も確かにある。







(3)投資金額が無駄になっている


パフォーマンス面で群を抜いて無駄になっているわけではないことは(1)で確認したため、ここでは売却ディールによって当初の投資金額(購入時の金額)がどの程度回収できたかを見る。
ただし、現在も在籍中の選手については売却金額が確定していないので、Transfermarkt.ukの市場金額によって代用する。これも結論から言えば、そこそこ良い方である。



リヴァプールアーセナルは対象期間内の売買で利益を出している(ないしは出せる)が、リヴァプールはご存知スアレスの売却によるところが大きい。
加えて言えば、キーンやキャロルといった評価の低い物件がそこそこ高額で売れていることも影響している。キーン、サイドハーフとかやってたよね。あの頃。



また、アーセナルはジルー、キャンベルといった現在在籍中の選手を今すぐ手放したら、という前提なので、その点が影響していることは考慮されたし。
シティの数字がさほど悪くないのは、在籍中のアグエロ、ジェコ、ヨベティッチの市場価値がさほど下落していないことに加え、ネグレドバロテッリテベスといった選手についても一定程度(約50%〜125%)を回収できていることによる。








ということで、思ったほどシティの投資対効果は悪くない(少なくとも上位6クラブの中で群を抜くほどでは)ということであった。
まあそもそも、5年で10位から国内主要タイトル全て獲得の状態まで行ったところで”費用対効果”はあったじゃないかと言うことも可能だが、もう少し細かく議論するための材料としては以上のところである。



さて個別のFWに対するディールの評価だが、長くなったので記事を分ける。