2015/16シーズン 上位陣プレビュウ リヴァプール編

「何位になりそうか」はよくわからんので、「何位なら成功/失敗と見なすべきか」について、考えてみたいと思います。




リヴァプール


2013/14シーズンからこっち、話題を独り占めにしている感がある名門。「持ち上げるだけ持ちあげて、盛大に落とす。しかも天丼で」という定番芸のキレは増すばかりである。その大半はジェラード関係だが。本当はジェラードのこと嫌いなんじゃないのか。






とはいえピッチ外のパフォーマンスは改善しつつある。放映権料の増加と減損の削減で営業利益(Operating profit)は黒字に転換、営業キャッシュフローも約2倍に増加した。BSサイドでは僅かに(Gross Debt:2013→2014で+£9.7m)借入を増やしたが、EBITDAの2.4倍程度であり、特に問題は無い。困ってもセルの実弾としてHG適用の若手を多数取り揃えており、収益性は保てそうだ。


(売上、営業利益、営業キャッシュフローの推移)

※金額単位は全て百万ポンド





ジョージ・ジレットとトム・ヒックスの共同オーナー体制だった2009年まではとにかく負債が重すぎ、主力の売却による埋め合わせを伴わない純粋な補強ができない状態だったが、オーナーシップの交代以降財務状態は劇的に改善している。例えば2009年は有利子負債が現在の約4倍あり、最大で£17.6mの利払いを強いられていた。£17.6mといえば0.36スターリングであり、0.5キャロル。いっぱしの選手が買える額である。ダウニングとか。

(有利子負債総額の推移)






従って前オーナー時代は新規獲得と主力の売却をセットで行わざるを得なかったが、オーナー交代以降は純粋な選手獲得(獲得費用−売却益。ここでは”Player Registrations”選手登録費用)が増加。売る側のクラブから買う側のクラブへの転身が図られている。

(投資キャッシュフローの内訳:前オーナー時代と現オーナー時代)






FFPも取り調べ対象にはなったものの、引っかからずにクリア。まあSwiss Rambleの記述を見る限り、割と怪しい計算だったようだが。

http://swissramble.blogspot.ch/2015/03/liverpool-show-of-strength.html

Liverpool have managed to avoid any FFP issues, even though their cumulative pre-tax loss of £89 million for the last three seasons is clearly higher than UEFA’s €45 million limit (assuming the owners cover the deficit by making equity contributions). This is because UEFA permits some “good” costs to be excluded from its break-even calculation, such as stadium development, youth and community development and goodwill amortisation.

However, the clause that has probably most helped Liverpool is the possibility to exclude the wages for players signed before June 2010 (when the FFP rules were introduced). Theoretically, this would only be allowed if Liverpool’s losses had reduced from 2011/12 to 2012/13, which was not the case, but as the 2011/12 accounts only covered 10 months, the argument must have been that it would have been higher on an annualised basis.

ただし、今後他のビッグクラブと張り合うには依然として収入規模の小ささが懸念。マッチデイ収入※はシティより£3M大きい程度で、マンUアーセナルの約半分。スタジアム改修を控えているものの、増収見込みは+£25m程度でしかない。
またコマーシャル収入もマンチェスターの2クラブに大きな差をつけられており、ブランドを売りにしているリヴァプールとしては看板倒れだ。ロイヤルで大きなファンベースが世界中にある一方で、換金能力が低いのは非常に勿体ない。育成した選手の売却で追加の投資予算を得る手もあるが、主力の売却を恒常的に行いつつタイトルを取ることの難しさは、ヴェンゲルが語ってくれるだろう。FFPは投資額そのものに制限を設けるルールでは無いので、いかに効率的な運営が出来ようと売上拡大で遅れを取れば、効果は相殺されてしまう。若手選手を1stチーム内で戦力化していくのが上手いことは救いではあるが、それだけでは十分ではない。



ピッチ内ではブラジル代表のレギュラーであるフィルミーノに、プレミアでの実績豊富なベンテケを獲得。昨シーズン焼け野原だった前線に計算が立ちそうである。DFラインとGKには依然として不安が漂うが(ブラッド・ジョーンズに替えてボグダンて)、展開次第でCL圏内も狙えそうだ。




それで結論として、今シーズンCL圏内に行けなかった場合に失敗と見なすべきかどうかなのだが、実際戦力的には少々厳しいと思う。マンUかシティがコケれば(シティの場合、すんごくありそうな気がするがそれはまた別の話)4位以内には入れるだろうが、それを期待するのもどうなのみたいな。ただ、CLの放映権料が獲れなければ他の4クラブとの収入規模の差はさらに拡大してしまうので、失敗としておくべきなのかなみたいな。人気は衰えていないブランドの強さを考えれば、長期的には焦る必要もないと思うのだが、また5位か6位で良いですというのも身も蓋もない感じがして。


でも予想は5位。



(sources:The Swiss Ramble, Transfer League, Transfermarkt, Guardian)