人件費と成績の関係についてちょろっと見てみた話


昨日Twitterでこんな表が流れてきた。



2014年のJ1・J2について、営業費用と最終的な順位の関係性をグラフにしたものだ。まず言えるのは、Jリーグは経営泣かせだね、という話。C大阪、大宮、清水が残留を争う一方で、同程度からそれ以下しか金を掛けてないG大阪鳥栖、川崎が上位に進出している。現場の工夫次第で上位進出が可能だということもできるが、この状況で営業に行く社員さんは頭が痛かろう。私が営業先の社長なら、「お金いらないじゃん、これ。ガンバみたいに工夫しなよ」と言う。間違いなく言う。






今回はイングランドプレミアリーグについて、同じように関係性を見てみた。下の表は、縦軸に「成績に対する資金効率性(勝点1当たりの選手人件費)」、横軸に順位を取ったものである。


赤い破線が「勝点1当たりの人件費」平均とすると、右上に行くほど戦力に対して効率よく勝点を稼ぎ、上位に進出したクラブ、左下に行くほど効率が悪く、順位も低かったクラブとなる。
横軸が順位なのは、いくら効率が良くても降格しては本も子も無いため。優勝を惜しくも逃したチームのファンに「でも、あなたのチーム、どこよりも少ない費用で勝点を稼いでるんですよ」と言ったところで何の慰めにもなるまい。結局のところ、効率性をどこまで問題にすべきかが知りたいのである。

(対象は09/10シーズンから13/14シーズンまでの5シーズン。選手の人件費は、主にGuardianの記事をもとにしている。)






シーズンごとのプロットを見る前に、結論を述べてしまおう。5シーズンのプロット結果からみて、各チームは以下の図のようなグループに分かれる。


「低コストで好成績」はおとぎ話


理想は今シーズンの鳥栖G大阪のように、「平均を遥かに下回るコストで勝点を稼ぎ、上位に進出する」こと(右上の破線)だが、そんな上手い話はイングランドには無い。平均以下〜平均前後の人件費/勝点では、上手くいってもEL圏内が関の山なのだ。
逆に言えば、Jリーグはバジェットに左右される部分が少ない、夢のあるリーグと言えよう。








タイトルが欲しければ、効率性には目を瞑れ


右下は人件費だけで年間1億ポンドを超える金持ちの集まり、1億ポンドクラブである。具体的にはマンチェスター・U、マンチェスター・C、チェルシーアーセナルリヴァプール。彼らのレベルになると人件費が高すぎるので、効率性はすこぶる悪い。勝点1獲得にかかる人件費は、降格するチームより多いのだ。それくらい効率性を無視して一定額を突っ込まないと、そもそも優勝やCLは争えないのである。







中堅以下の理想形、スパーズ


1億ポンドクラブの左、6〜10位に位置するのが「何してんねんクラブ」と「優等生」である。EL圏内〜トップ10の成績を収めているグループだが、前者は大分金を掛けてその成績、後者はさほど金を掛けずにこの成績。分かりやすく言えば、前者がここ5年のリヴァプールで、後者がエヴァートンである。レッズファンの人、すまんな。



その隣は人件費なりに勝点を稼いで残留に成功したグループで、いわゆるマイナークラブ。
左上に位置するのは、使うお金が無さ過ぎた人たちである。何しろ分子となる人件費が小さいので、人件費/勝点の効率性は見た目上とても良い。ただし戦力的にはリーグの平均水準から大きく離れているため、多くは降格してしまう。左下が最も救いのない人たちで、大金を投じて高額・有名な選手を揃えた割に、勝点がついてこなかった人たちである。無能な外資系オーナーが買収したクラブにおいて発生しやすい。



これらのグループで、最も成績と効率性を両立しているのはトッテナム・ホットスパーである。普段(私が)茶化してばかりだが、実際素晴らしい成績なのだ。予算規模からしたら。人件費は13/14シーズンまで1億ポンドを超えたことはないが、4位が2回、5位が1回。昨シーズンも何だかんだで6位に入った。「1億ポンドクラブ」のメンバーでない限り、CL圏内に入るチャンスすらほとんど無い状況において、最大限望みうる成績と言えるだろう。これ以上を望むかどうかは、選択の問題である。








では以下に、シーズンごとに見て行こう。まずは09/10シーズン。残念ながら降格3チームはデータが見つからなかったが、どのシーズンも下記の青い線のような分布になることは憶えておかれたし。


分かりやすい間抜けが2ついますね。シティはアブダビ資本による買収の2年目で、テベスアデバヨルコロ・トゥレと補強を重ねていたのだが、ヒューズ政権下で引き分け地獄に陥り、マンチョに挿げ替えられた年である。リヴァプールベニテス最終年。シャビ・アロンソアルベロアを売ったら大失敗したでござるの巻、である。せっかく前年に優勝間近まで迫ったのに、またしても振り出しに戻っている。
良い方で見れば、アストン・ヴィラトッテナムの効率性は素晴らしい。いずれも勝点1当たりのコストはリヴァプールやシティの半分程度で、CLとELに出場である。



次は10/11シーズン。


このシーズンの特徴は、「貧乏すぎて見かけの効率性は高いが、戦力が足りないため降格」というチームが出てきたことである。ブラックプールの勝点コスト(人件費/勝点)は今回の調査中最低の64万ポンド/勝点1。誰よりも効率は良いのだが、戦力が足りてなさすぎた。ちなみに、前述のツイートを見る限り、今期のJリーグにはそうしたチームはいなかったようである。
優勝はマンUチェルシー、シティと比べて勝点1当たり100万から150万ポンド低い人件費で優勝しているのだから立派。



11/12シーズン


やったねリバポ、仲間が増えたよ!
それは良いとして、気になるのはアストン・ヴィラの放浪である。年々グラフ内を右上から左下へ。「より貧乏に、より弱く」成り続けていることを示している。ヴィラの人件費総額は長期的には減少傾向にあるが、人件費削減のスピードよりも、競争力喪失のスピードが速いということだ。何かの拍子で、「高額選手を多数抱えて降格」という事態になりかねない。
また、トッテナムは3期連続の「優等生」である。一方で3位以上を狙うには、両マンチェスターアーセナルチェルシーのように1億ポンドを超えて人件費を突っ込む必要がありそうだ。どうする?レヴィー会長!?










レヴィー「いやあ、無理はしないよね」



ですよねー。
優勝はマンU。対象期間においてマンUの勝点効率はチェルシーやシティを常に上回っており、その状態でタイトル2つを獲得したのは素晴らしい。
これがファーギーマジックというやつである。
一方でリヴァプールは相変わらずの成績ながら、勝点1当たりの人件費は、より平均値の水準に接近。「ビッグ4の一角 ⇒ 主力の流出等により、成績が一時的に低下 ⇒ 監督・選手のリフレッシュを図るも、フロントの失策により競争力低下 ⇒ 相対的な予算規模を縮小し、出直しを図る」というプロセスを辿っていることが伺える。
QPRはもはや笑うしかない。マンチェスター・シティも一歩間違えばこうなっていたかもわからないところである。




そんな状況下で迎えた13/14シーズンはマンUリヴァプールの立場が逆転。



リヴァプールは「平均以下の人件費/勝点で2位」という偉業を成し遂げ、マンUは7位なのに勝点1当たりの人件費はリーグ1高いという「キング・オブ・何してんねんクラブ」入りを果たした。