灯台下暗し:人材のプール


ガイナーレ鳥取がJ2昇格、米子北高校が09年のインターハイで準優勝、高円宮杯でベスト8入りしたこともあり、鳥取県のサッカーに対する注目が高まっている。

かつて鳥取といえばサッカー不毛の地であり、鳥取出身のJリーガーも長らく塚野正樹氏一人だけだった。小中を鳥取で過ごした中田浩二滋賀県出身)を鳥取県出身として扱っていたほどである。高校選手権やインターハイに出ても、1回戦で敗退する「お客さん」だった。*1



それが今や選手権で優勝候補に挙げられ、Jリーガーも5人まで増えた。強くなった理由について語られていることはさまざまである。長年の指導成果が実を結んだとか、大阪の選手を受け入れる(いわゆる野球留学のサッカー版といったところか)ようになったとか。

しかし、鳥取県の指導が他県と比べて特別変わっていたとは考えづらいし、大阪でトップではなかった選手を獲っていることからといって大阪より強くなる道理はない。(09年の高円宮杯で得点王をとった米子北の山本大稀は、「選手権に安定して出たいから鳥取に来た」と公言している。)




強くなった理由の1つは、今まで活用されてこなかった県内の人材プールに手を広げたことではないだろうか。米子北のメンバーには鳥取県中部、東部出身の選手が多く含まれている(選手権の登録メンバー23人中5人)。鳥取県のサッカーは西部が圧倒的に強く、中部東部の高校が選手権に出たことは少なくともこの30年間1回もない。中学までは中東部にも良い選手がいるのだが、高校に入ってマジメにサッカーをやらなかった結果、身を持ち崩すことが多かった。高校のサッカー部でも、県大会で優勝を狙える高校(ここ10年は境、米子北、米子東の3つに絞られている)には中東部出身の選手がほとんどいなかった。

こうした選手たちが西部の高校に入学し、真面目にサッカーをやるようになったことで、人材のプールを有効に活用できたものと思われる。そもそも鳥取県は全都道府県中もっとも人口が少ない県であり、それが自ら人材プールを狭めていたとなれば、弱いのも当たり前である。



もちろん、だからといって全国優勝が狙えるまで強くなった理由にはならないのだが・・・・

*1:筆者の友人は中学時代中国トレセンに参加し、仲良くなった広島県選抜の選手に「鳥取県選抜である」ということが知られてから縁を切られたという