because you’re not dreaming-ブラックプールFCとは-

「頬をつねりたまえ、ブラックプール・ファンよ。夢じゃないんだから!」―BBC textlive


ブラックプールが大方の予想を覆す戦いを見せている。
8試合を終えて3勝1分け4敗の10位、アウェーでは3勝2敗でなんとリーグ1位の成績だ。
10月3日には敵地アンフィールドリヴァプールに2−1の勝利。まだ開幕して2カ月だが、開幕前の“ダントツの降格候補”というレッテルはすでに払しょくした。




ブラックプールは、イングランド北西部ランカシャーにある小さなチーム。「小さな」というのはつまり、地理的にも歴史的にもこのチームが他のクラブに比べて少ない財政的サポートしか受けられず、そしてこの先拡大する見込みも小さいということだ。

まず、ブラックプールのスタジアムは、16220人しか収容できない。これはプレミアリーグ20チーム中最低で、次に小さなボルトンと比べても9000人以上の差がある。サッカークラブにとってスタジアムの入場料は非常に大きな収入源だが、ブラックプールはそれに期待できない。また、地理的に見ても、イングランド北西部にはライバルが多い。近所にはブラックバーン、バーンリー、プレストンがいるし、ちょっと足を伸ばせばマンチェスターリヴァプールといった大きな都市がある。新たなファンを獲得には厳しい環境だ。



表1は、この18シーズンのブラックプールの成績だ。「tier」はリーグのランクを表しており、濃いピンクの「1st」がプレミアリーグに当たる。0がプレミアリーグの1位で、y軸の数字はそこからどれくらい離れているかを示している。つまり2部の5位なら、20+5で25位だ。この表からわかるとおり、ブラックプールはだいたいいつも3部リーグをうろついているようなチームだった。最後にトップリーグで戦ったのは40年前だ。








そのブラックプールが、どうやってプレミアリーグで勝ち点を重ねているのか。チームとしてのミクロな話に移ろう。


基本の並びは4−3−3。両ウィングは守備時にも高い位置を保って相手のSBにプレッシャーをかけるという点で、4−1−4−1とは分けて考えられるべきである。チームの特徴は、縦への速い展開と、攻撃時の人数のかけ方。前線の3枚はドリブルこそさほど巧くないもののスピードと体力があり、スペースに走りこんでボールを受けるのに長けている。前線からプレスをかけて中盤でボールを奪い、アダムからのスルーパスでFWが抜け出すのが得意のパターン。マンチェスター・シティ戦の後半、テイラー=フレッチャーが抜け出してゴールしたシーンなどがその典型だ。(判定はオフサイド

人数をかけた攻撃を示すのがこのシーン。この写真では見えないが手前のタッチライン際にも選手がいるので、7人も相手ゴール前に迫っていることになる。すさまじい人数のかけ方で、カウンターを食らったらひとたまりもない代わりに、エリア内には常に3人から4人の選手がいるので、クロスやスルーパス、またはその後の混戦からシュートまでつながる可能性は高い。DF陣は率直に言って、プレミアのレベルにはない。ミスが多く、絶対的な能力も低い。だがここまではGKのジルクスが好セーブを連発して失点を抑えている。




以上の要素から、ブラックプールはとても出入りの激しいサッカーをしている。ブラックプールの攻撃を受け流す守備力と、カウンターの精度があったアーセナルチェルシーには、それぞれ6−0、4−0で一蹴された。だがマンチェスター・シティリヴァプールのように守備時に穴が多いチーム相手には、2・3点を奪う力を持っている。




ブラックプールほど小さなクラブにとって、プレミアリーグに残り続けることが幸せかどうかはわからない。残留のためにはより良い選手が必要で、そのためには移籍金と年棒がいる。だが、ブラックプールにとってそれは危険な賭けだ。身の丈を超えた財政運営は、ポーツマスやリーズ、レスターのような財政破たんを招く。

財政破たんは悪いことか?という点については、いずれ触れる。