ニワカと学ぶサイクルロードレース主要ライダー50人

ここ数年、サイクルロードレースにはまっている。


目が離しにくいサッカーと違って、ダラッとしながら眺めるにはあんなに良いスポーツは無いのだが、選手の役割と脚質(能力ね)が判らないと今一つ楽しみにくいスポーツであることも確かであろう。
ということで、ここはひとつにわかの私が次のにわかのために、ここ数年で仕入れた知識を皆さんに披露したいと思う。スポーツ自体の特徴を解説するサイトは山ほどあるので、今回は選手名鑑っぽいことをしたい。
このスポーツは順位やら何やらに応じて個人にポイントが付くので、過去3年間の上位50人を選んでみた。有名選手でも多数リストから抜けているが、手始めに憶える分には適当な基準ではなかろうか。


※ちなみに、以下よく出てくる「TDF」とはツールドフランスを指す。
選手名/出身国/脚質/所属チーム



◆50位 トニー・マルティン ドイツ TTスペシャリスト エティックス・クイックステップ
世界選手権のTT部門を3回制している、現代ロードレース界におけるTT第一人者の1人。カンチェラーラがよりクラシック寄りにシフトした後は、実質的に世界最強のクロノマンとして君臨している。
元々総合系の選手だったらしくそこそこ登れる上、逃げ切りに加えてアタックも可能。TDFでは殆ど1人TTのような超長距離逃げや、終盤でのアタックなど、TT以外のステージでも勝っている。エラの張った顔とデカイ口が特徴。



◆49位 マーク・カヴェンディッシュ イギリス スプリンター エティックス・クイックステップ
人呼んでマンクス・ミサイル。オートレースで有名なマン島出身だからマンクス。2005~2012年頃までは文句なしに世界最強のスプリンターであり、ミラノ〜サンレモグランツール全てのポイント賞、平坦基調の世界選手権と、スプリンターが取るべきタイトルは全部取っている。TDFでは合計26勝、ジロとブエルタを合わせるとグランツールで合計44勝しているという怪物である。あるが、最近は少々衰え気味で、キッテルやグライペルと比べると存在感が薄く、来年はどこかに移籍するという噂も。ピュアッピュアなスプリンターなので、坂は全然登れない。
スプリンターの割にはとても小さい。そしてよく拗ねる。最近も「ブエルタは年々アホらしくなってきてる(訳:山ばっかじゃねーか勘弁しろよ平地増やして下さいお願いします)」と発言してちょっとした話題になった。



◆48位 ミケーレ・スカルポーニ イタリア クライマー アスタナ
ジロで総合優勝1回、4位3回の実績を持つおっさんクライマー。まあジロの優勝は、コンタドールが失格になったからだが。
頭髪が物悲しさを感じさせる。ミラノ〜サンレモで6位に入ったこともあり、アタックの力もそこそこ。現在はアスタナでニーバリ王の家臣を務めつつ、若手の育成も期待されているようだ。



◆47位 トニー・ギャロパン フランス パンチャー ロット・ソウダル
フランス期待の若手・・・というには大分年齢もいってしまったが、TDFでマイヨ・ジョーヌを1日着たり、世界選手権で6位に入ったりと力はある。
総合はきついが、スプリントのチームなので余り求められてはいないようだ。嫁は元フランスチャンピオンだが、めっちゃ美人。ロードレース界の姫。



◆46位 ロベルト・ヘーシンク オランダ オールラウンダー ロットNL-ユンボ
将来のグランツール覇者に!というオランダの期待を若い頃から背負ってきたが、節目節目で不幸に見舞われ、結局スターになり切れなかった苦労人。2008年頃からブエルタで大活躍し、2010年のTDFでは4位に入ったが、同年に事故で父を亡くす。その後も不整脈で手術を受けたり、奥さんの出産が難儀したりと大変な人生を歩んでおり、その間はグランツールでの成績も低迷を続けていた。
今年のツールでは復活の6位。ファンタスティック4+バルベルデを除けば最上位と考えれば、素晴らしい成績と言えよう。ただし、こっから先に行く気もあんまりしないんだよね。



◆45位 ヤコブ・フールサン デンマーク オールラウンダー アスタナ
TDFで一回7位に入ったことがある実力派。ドーフィネやパリ〜ニースのようなステージレースでも大体上位に入ってくる。TTも結構速い。グランツールは厳しいが、アシストとしてはいてくれると大分嬉しい存在。というか、若い頃は総合リーダーとして期待されていた選手だったらしいのだが、シュレックのアシストをしたり、ニーバリのアシストをしたり、、、としているうちに三十路に入ってしまった。兄弟日本では「フグルサング」と呼ばれている。



◆44位 マイケル・マシューズ オーストラリア パンチャー オリカ・グリーンエッジ
若手のポップシンガーっぽい(バカっぽい)笑顔が特徴。いつ見ても歯が輝いている。あだ名は「Bling(キラ☆キラ)」。親父に付けられたらしい。親父、毒あるな。
スプリントのあるパンチャーといった風情で、アルデンヌ系クラシックでは優勝候補の一人。グランツールでも結構ステージを勝っている。



◆43位 アンドリュー・タランスキー アメリカ オールラウンダー キャノンデール・ガーミン
2014年のドーフィネで総合優勝し、グランツールでもトップ10が2回。タメのヴァンガーデレンとともに、アメリカ人としてはグランツール制覇に最も近い位置にいる。まあ優勝できそうかは置いといて。2日連続で落車し、ボロボロになりながら32分遅れでゴールしてたりして、根性は異様にある。チームメートのヘシェダル譲りなのだろうか。



◆42位 セップ・ヴァンマルケ ベルギー クラシックスペシャリスト ロットNL-ユンボ
190cmの仏頂面。北のクラシックでは毎年上位に入ってきており、ボーネンカンチェラーラ引退後のクラシックキング候補ではある。
まあその2人に比べると絶望的に華はないけど。彼に限らず、現代のオランダ人とかベルギー人有力ライダーというのは、ボーネンジルベールを除いて、まあ押し並べて華は無い。実力派ということにしておきたい。



◆41位 カルロス・ベタンクール コロンビア クライマー AG2R 
近頃めっぽう強いコロンビアの若手世代の1人。ジロで総合5位&ヤングライダー賞を獲ったかと思えばブエルタでどーしょもない成績だったり、コロンビアに帰省したっきりよくわからん理由で帰ってこなかったり、波が激しくて扱いづらいタイプ。
パリ〜ニース総合優勝経験も持っており、アルデンヌクラシックでも上位に入ってくる実力者なのだが。すでにAG2Rからは2015年をもって離脱が決定。



◆39位 アンドレ・グライペル ドイツ スプリンター ロット・ソウダル
カヴェンディッシュ、キッテルらと並ぶ、世界最強のスプリンターの1人。ひたすらにムッキムキなので、あだ名はゴリラ。フレームにもゴリラの絵。TDFの期間中に連載していたブログのタイトルもラ・ガゼット・デュ・ゴリーユ(ゴリラ新聞)。
どっちかというとゴリラと言うよりサイボーグと言うかロボット感があるのだが、その辺はヨーロッパ人との感性の違いだろうか。実績ではカヴェンディッシュに、近年の勢いではキッテルに劣っていたが、今年のTDFではステージ4勝と大活躍した。その2人と比べるとまだ上りに適応できる方で、春先のクラシックレースにもちょいちょい出てきては謎のアタックを見せたりする。



◆38位 セルヒオ・エナオ コロンビア クライマー チームスカ
よくエナオモントーヤと呼ばれるコロンビア人。ロードレース界はスペインおよび南米系の名前をどう呼称するかについて未だにもてあましている節があり、第二(もしくは母方の)苗字も併せて呼ぶので、ウランウランとかアナコナゴメスとか、多少変なことになっている。素直にエナオ、ウラン、アナコナでええんや。
コロンビア人ライダーには割と多いのだが、高地出身のため素の状態で血液が(常人が)ドーピングした状態に近くなっているらしく、2014年にはそのせいでレースに出られない時期を過ごした不幸な人。登坂力は折り紙つきで、アルデンヌ系クラシックでは上位を伺う一人。まあスカイにいる限りは山岳アシストだろうが。見た目は何というか、「エナオどん」と呼びたくなる感じ。



◆37位 ベニャト・インチャウスティ スペイン オールラウンダー モビスター→スカイ
モビスターにてアレハンドロ・バルベルデ師匠の子分を務めるバスク人コンタドールバルベルデホアキンの3巨頭に続く存在がいないと囁かれるスペインの中では、そこそこ若くて有能。
ジロ、ブエルタではトップ10入りの経験もあり、今年のジロでもバルベルデ、キンタナの2大エース不在の中、山岳賞争いに絡んでいた。キンタナが今後TDF制覇を狙う中で鍵になる存在・・・と思っていたら、スカイに移籍しよった。



◆36位 ティム・ウェレンス ベルギー クライマー ロット・ソウダル
ゴリラのアシスト陣の一人。1991年生まれとまだまだ若いが、ここ2年で急速に力を伸ばしている。
Wikipediaにはクライマーと書いてあるが、ベルギー人らしく逃げやアタック、坂道での抜けだしが得意な印象。今年のフレーシュ・ワロンヌではラスト数キロで抜け出し、あと600mまで粘っていた。



◆35位 ウィルコ・ケルデルマン オランダ オールラウンダー ロットNL-ユンボ
ヘーシンクとモレマがいまいちグランツールで勝てそうなところまで成長しないうちに、オランダの新星として台頭。2015年はTTのオランダチャンピオンにもなっている。
山にも平地にもそこそこ対応でき、2014年は弱冠23歳でジロ7位に入っている。ぱっと見はヘーシンクと全く見分けがつかないのが難点である。もみあげとか伸ばしてくれ。



◆34位 ジャン=クリストフ・ペロー フランス オールラウンダー AG2R
北京オリンピックMTBで銀メダルを取った後、33歳でロードに転向。その前にはグランゼコールの国立応用科学研究所で修士号を取り、国家エンジニア(チョー難しいらしいよ)の資格も取って、今でも原発で有名なAREVAの社員らしい。そんで2014年にはTDF総合2位。波乱万丈の人生を送る38歳。
今年のツールではド派手な落車で左半身ずるむけ、ユニフォームの股間が破れてペローのペローがペロー状態という苦難も味わった。年齢的にこれ以上の伸び代は難しいだろうが、応援したくなるおっさんである。



◆33位 ティージェイ・ヴァンガーデレン アメリカ オールラウンダー BMC
押しも押されぬアメリカ最強のライダーであり、ニーバリ、コンタドール、フルーム、キンタナを指す世界最強の4人、「ファンタスティック4」に最も近い男と称されるBMCの総合系エース。
今年のTDFでは「ファンタスティック4とか言っちゃって、あれ、僕も入って良くない?ん?わかんないけど?わかんないけど?」みたいなことを言っており、実際に優勝を狙えそうな走りを見せていたのだが、発熱であえなくリタイアしてしまって残念無念であった。まだ若いので、今後もグランツールの総合争いには確実に絡んでくるはず。



◆32位 ヨン・イサギーレ スペイン オールラウンダー モビスター
兄のゴルカや、インチャウスティとともにバルベルデさんを支える子分3号。ジロのステージ優勝、ツール・ド・ポローニュ総合優勝に加え、国内選手権も制しており、次世代のオールラウンダーとして期待がかかる・・・が兄と一緒にスカイに行くという噂も。
ちなみにエナオのところで言ったように、ロードレース界ではスペイン人の名前をよく「ファミリーネーム+母方の苗字」で呼んでしまうので、Jsportsなんかでも「イサギレインサウスティ」と訳のわからない歯切れ良さで呼ばれるシーンが多々ある。口に出して言いたいスペイン人、イサギレインサウスティ。よさよいinアイスティー!みたいな。



◆31位 ズデニェク・シュティバル チェコ クラシックスペシャリスト エティックス・クイックステップ
シクロクロスの世界チャンピオンに3度輝いた、エティックスの主力の1人。膠着した終盤での鋭いアタックが持ち味で、スプリント力もそこそこある。もう30間近だが、今年はパリ~ルーベで2位、ストラーデ・ビアンケで優勝、ツールでもステージ優勝と勝てるところを見せており、ボーネンカンチェラーラ後の新たなクラシック王になれる存在ではなかろうか。



◆30位 ニキ・テルプストラ オランダ クラシックスペシャリスト エティックス・クイックステップ
人呼んでオランダの逃げ番長。パリ~ルーベで優勝1回、3位1回、ロンド・ファン・フラーンデレンでも2位1回と、北のクラシックにはめっぽう強い、クラシックの第一人者。スプリント力は無いが、とにかく終盤での長めのアタックに強い。一方で逃げたはいいけどその後の判断が煮え切らず、結局優勝を逃すシーンもあったりして、この辺は長年トム・ボーネンという絶対的エースを奉じてきた影響かもしれない。



◆29位 ロマン・クロイツィゲル チェコ オールラウンダー ティンコフ・サクソ
バッソ、マイケル・ロジャーズ、ベンナーティと並ぶコンタドール4奉行の1人(勝手に呼んでる)。アムステル・ゴールドレースやツール・ド・ロマンディといった名のあるレースも制してきたオールラウンダーで、ジュニア時代はアンディ・シュレック、ヴィンチェンツォ・ニーバリのような後のグランツール勝者と競り合ってきたらしく、チームがチームならエースを任せられているであろう。伸び盛りの時期にドーピング疑惑で1年くらい出場できなかった(結局潔白が証明された)のは残念無念である。今年のジロではアスタナ勢にティンコフのアシスト陣がバラバラにされる中、一人山岳でコンタドールを支え続けていた。



◆28位 ダニエル・モレーノ スペイン クライマー カチューシャ
カチューシャのエースであるホアキン・ロドリゲスを長年支えてきた右腕。脚質もホアキンぽい感じで、長い山岳はちときついが、激坂にはめっぽう強い感じ。昔は山にも強かったのかもしれないが、最近見てる感じだと”ファンタスティック4”辺りと本格的に山で競うのはちときつそうである。それでもブエルタでステージ3勝、フレーシュ・ワロンヌでも優勝1回、アシストとしてはこれ以上ない成績。



◆27位 ロマン・バルデ フランス クライマー AG2R
プリクラで修正したかのような尖った顎とキラキラした目が特徴の優男。同い年のティボー・ピノと並んで長年TDF優勝者が出ていないフランスの期待の星なのだが、二人とも勝負弱い感がいかにもフランスっぽくて宜しい。今年のTDFではピノと二人で抜け出し、最後のスプリントに向けて延々と二人で牽制・・・していたら後ろから飛んできたスティーヴ・カミングスに優勝をかっさらわれる大失態。それでもステージ1勝とスーパー敢闘賞をもらい、2年連続でトップ10にも入った。平地も山も、トップレベルと競るにはまだ物足りないが、期待はさせてくれる。



◆26位 フィリップ・ジルベール ベルギー パンチャー BMC
「パンチャー」の代名詞みたいな元世界チャンピオン。2011年にはアルデンヌクラシック3つを全て勝ち、翌年にはUCI世界ランキング1位。グランツールでも通算でステージ9勝しており、好調時はマジで鬼のように強い。激坂での登坂力が持ち味だが、スプリントや終盤でのアタックなどレパートリーはさすがに広く、本格的な山岳やド平地でなければ大体優勝が狙えるんではなかろうか。かつての最終局面でのヘタレっぷりから日本では「ジルベール黄金のタレ」と名付けられているが、最近は絶対的なアタック力が落ちた代わりに、判りやすいタレっぷりも無くなっている気がする。



◆25位 ティボー・ピノ フランス クライマー FDJ
バルデと並ぶフランス期待の星。2014年のTDFでは3位&新人賞を獲得し、2015年は更なる飛躍が期待されたが、序盤から思いっきり遅れて早々に表彰台への望みが無くなり、口を開けばぐちぐち言っていたので「キャプテン・ネガティブ」とあだ名されてしまったとかしまわないとか。平地対応もちと不安だが、何より下りがごっついヘタクソなのが勿体ない。もう、めっちゃ遅いの。転ぶし。しかし考えてみれば90km/hでアルプスを下れるサガンみたいなのが異常なのであって、普通人類の身体は山をあんな速度で下るようにはできていない。
散々だった今年のTDFだが、最後にラルプ・デュエズ(ごっつい険しい山岳)でど根性の逃げからステージ優勝。なんとか面目を保った。



◆24位 ゲラント・トーマス イギリス(ウェールズ) オールラウンダー チームスカ
トラックとロードの兼用選手。トラックではチーム追い抜きで北京、ロンドンと五輪を2度制覇。ロードではフルームの忠実なアシストとして、横風にブッ飛ばされて畑に落ちたり、下り坂で突き飛ばされて鉄柱に頭ぶつけたりしながら頑張っている。
パリ〜ルーベのジュニア部門を制したり、E3ハーレルベーケで優勝したり、ヘント
ウェヴェルヘムで表彰台に上がったり、クラシックには元々強かったのだが、今年のTDFでは誰もが驚く脅威の山岳対応力を披露。そのうちグランツールの総合が狙えるかもしれない。
ちなみに鉄柱に頭ぶつけたときは、医者の「あなたの名前は?」という確認に「クリス・フルーム」と答えたりする、ジョーク精神のある男。



◆23位 サイモン・ゲランス オーストラリア パンチャー オリカ・グリーンエッジ
ジルベールらと並ぶパンチャー界の第一人者。リエージュ〜バストーニュ~リエージュミラノ〜サンレモという二つのモニュメント制覇に加え、2014年には世界選手権でも2位に入った。
坂にも強いしスプリントもできる。謎の落車癖が惜しいところ。ジャガイモみたいな頭をしている。



◆22位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ イタリア クライマー AG2R
トッポジージョ感漂う愛くるしい名前の、めっちゃちっさいおっさん。ジロでのステージ優勝1回、トップ10入り4回の名クライマー。今年のジロでは下り坂で顔面からクラッシュし、大流血。ピクリとも動かなかったので私を含む観客はもしものことがあったらと大変動揺してしまった。
幸いにも顔の裂傷以外は特に大事には至らず、顔もさほど大きな傷は残っていないようで、ブエルタには出場していた(よね?)。残りの選手人生はそう長くないかもしれないが、来年も元気な姿を期待したい。



◆21位 トム・ドゥムラン オランダ TTスペシャリスト ジャイアント・アルペシン
TOKIOの長瀬と松山ケンイチを合成して叩き潰した感じのオランダ人で、花の90年世代の1人。モササウルスの化石で有名なマーストリヒトの出身である。2014年の世界選手権個人TTで3位に入り、カンチェラーラマルティン、ウィギンスらに次ぐ次世代のTT王者に一番近いと思われていたが、今年のジロで総合ライダーとして大爆発。実質最終ステージの山岳で崩れるまでは1位をキープし、あわや優勝かという騒ぎになった。本格的にグランツールで総合が争えるか、来年以降に期待。ただし最近のグランツールはスプリントを狙うチームと総合を狙うチームで思いっきりメンバー構成が異なるので、キッテル、デーゲンコルプという2大スプリンターを抱えるジャイアントでやっていくのはちと難しい気もする。クライマーが揃う母国のロットNLに移籍した方が良いんではないだろうか。



◆20位 ラファウ・マイカ ポーランド クライマー ティンコフ・サクソ
コンタドールを支える有力アシストの1人。2013年初出場のジロで7位に入り、翌年のツールでは山岳賞を獲得。今年のブエルタではティンコフのエースとして臨み、あまり得意でないTTも無難にこなして3位に入った。
キンタナやロドリゲスのように急激なペースアップで相手を叩き潰すというよりは、じわじわ自分のペースで差を縮めていくタイプっぽい。コンタドールが来年限りでの引退を表明しているため、ティンコフの次期総合エースとして期待は大きい。JSportsのCMでは、「サイクゥルゥ、ロードレース、ミロナァラァ、Jsports」というじわじわくる棒読みを披露。



◆19位 リゴベルト・ウラン コロンビア オールラウンダー エティックス・クイックステップキャノンデール・ガーミン
キンタナに次ぐ、コロンビア旋風第2の男。山にもTTにも強く、2013年、14年と連続してジロで準優勝。クラシックに特化してきた名門エティックスがグランツールの総合にも殴り込みをかける上でエースとして期待されていたが、今年はジロで14位、ツールで42位と大失敗に終わった。ぶっちゃけまともな山岳アシストがいない中では無理じゃねーのという気もするが、GMのルフェーヴルは「まあウランじゃジロの2位が限界かもね」と冷たく、さっさと後任を探し始めていたため、ウラン本人もキャノンデールへの移籍と相成った。
正義感が強いのか、他人に口出ししないではいられない性分なのか、今年のジロでは優勝への賭けよりも確実な表彰台を狙ってきたアスタナのアルーとランダにブチ切れ、走りながら延々と文句を言い続けていた。長い後ろ髪が特徴なので、ヘルメットをかぶっていてもすぐわかる。



◆18位 シモン・シュピラク スロヴェニア オールラウンダー カチューシャ
え、こんな上?いや、私がニワカなのが悪いんだが、あんまり日本で名前を聞かないなという印象。ワンデーや短めのステージレースに強く、ツール・ド・ロマンディで優勝1回2位2回、ツール・ド・スイスで優勝1回。今年のツール・ド・スイスではクイーンステージ(一番高い山)で3位に入っており、山もだいぶ対応できるようだ。あとTTも結構いける。グランツールやモニュメントは現状厳しそうだが、このままUCIワールドツアーランクのステージレースで上位に入り続けるというのも、また一つの道ではある。



◆17位 ミハウ・クフィヤトコフスキ ポーランド オールラウンダー エティックス・クイックステップ→スカイ
日本では「クビアトコウスキー」と呼ばれることが多い、現世界チャンピオン。「Wi」を「ビ」(ヴィ)と読むなら、次のWはフと読まないと理屈が通らない気がするが。「Kwiat」というのが日本語で言うところの「花」なので、ネット上ではお花ちゃんとか呼ばれたりもする。まだ25歳だがストラーデ・ビアンケ、アムステル・ゴールドレース、世界選手権を制しており、パンチャー寄りのオールラウンダーとして90年世代のトップランナーの1人。坂でのパンチ力はあのバルベルデさんとも張り合えるレベルである。
何でもこなせるという意味ではオールラウンダーではあるのだが、現状本格的な山はちょっと厳しいんじゃね?という感じで、エティックスGMのルフェーヴルは「ミハウがツール?あー無理無理!」とここでもそっけなかったが、まだ若いので将来的にはグランツールの表彰台も狙えるかもしれない。



◆16位 ボウク・モレマ オランダ オールラウンダー トレックファクトリー・レーシング
ヘーシンクが伸び悩んでいるうちに登場したオランダ人総合ライダー・・・だったのだが、彼もまた伸び悩んでしまった。
2011年のブエルタで4位に入ったが、その後はTDFで6位、10位、7位と、トップ10には入るのだが、表彰台以上にはどうにも進めなくなっている。TTもそこそこ速いし山も登れるんだけどねえ・・・伝説的ライダー、ベルナール・イノー氏にも「モレマはぶっちゃけ大したことない」とか言われてしまったり。



◆15位 ファビオ・アルー イタリア オールラウンダー アスタナ
今年のブエルタで総合優勝。花の90年世代ではキンタナに次ぐグランツール制覇を成し遂げ、ロードレース界の未来を担うと期待される若手。既にジロでも表彰台に2回上っており、来年以降はツールでも見られるかも。
アホみたいに動きがダイナミックなのが特徴で、好調時は飛び跳ねるようなフォームで山岳をクリアしていく。外見上のポイントはかつてのロビー・ファウラーを思い出させる鼻孔拡張テープと、死ぬほどデカい口。苦しい時は口がかまぼこ型になるのですぐばれる。



◆14位 ヨン・デーゲンコルプ ドイツ スプリンター ジャイアント・アルペシン
笑顔と口ひげがトレードマークのスプリンター。同じチームのキッテルに比べ、平坦スプリントでは劣るものの、石畳や坂への対応、独走力で大きく優る。
パリ〜ツール、ヘント〜ウェヴェルヘムといった名のあるワンデーレースに加え、今年はスプリンターの夢ことミラノ〜サンレモに、「クラシックの女王」パリ〜ルーベも制して、クラシック界の第一人者に上りつめた。また、ブエルタには相性が良く、すでにステージ通算10勝。ブエルタは山ばっかりなので他のスプリンターが嫌がるのだが、そこにある程度対応できるからと思われる。



◆13位 リッチー・ポート オーストラリア オールラウンダー スカイ→BMCレーシング
フルームの右腕として2回のTDF制覇を支えた名アシスト。アシストとしては爆裂に登れる上、TTも強い。今年のTDFではたび重なる攻撃でフルームがついに決壊寸前、という絶妙のタイミングで助けに飛んできており、相手にするとほんとうっとうしい。
しかしグランツールでエースとして走るとなぜかダメダメ。今年はシーズン序盤のステージレースで勝ちまくり、押しも押されぬエースとしてジロに臨んだが大失敗した。エースとして走りたい!ということでBMCに移籍が決まったが、アメリカのチームだし、ヴァンガーデレンいるし、大丈夫だろうか。ちなみにインタビューでもエースのときは塩らしいのに、アシストのときは「強過ぎてすいませんねぇ〜」とか言ったり、わりと調子こくタイプ。



◆12位 ファビアン・カンチェッラーラ スイス TTスペシャリスト/クラシック・スペシャリスト トレックファクトリー・レーシング
スペシャリスト」が2つも並んだら矛盾しとるがな、と言われそうだが、カンチェくらいになるとそれも許される。怒り心党でも取り上げられて、日本での知名度も高いカリスマ。
キャリア序盤から中盤はTT星からやってきたTT星人として地球を荒らしまくり、世界選手権のTT優勝を4回制覇。中盤からはクラシック星人に生まれ変わり、パリ〜ルーベを3回、ロンド・ファン・フラーンデレンを4回、さらにはミラノ〜サンレモも制してしまった。2000年代中盤から2010年代初頭の北のクラシックはほとんどカンチェッラーラボーネンの二人相撲であったとか。
とにかくパワーが半端無いので、5秒離されたら1人では絶対追いつけず、4~5人程度ならまとめて相手が出来てしまうくらい。TDFでもステージ優勝8回を誇り、非優勝者のマイヨジョーヌ着用日数記録を持っている。というくらいの超人だが、さすがに近年は衰えも見られており、来年で引退するという噂も。



◆11位 グレッフ・ヴァンアーヴェルマート ベルギー クラシックスペシャリスト/パンチャー BMCレーシング
20台前半でブエルタのポイント賞を獲ってはいたのだが、脚光を浴び出したのは最近っぽい、世界屈指のパンチャー。ここ2年はパリ〜ルーベ、ロンドで表彰台に上り、TDFでも念願の初ステージ制覇を成し遂げた。上り坂でのパンチ力と終盤のアタックに優れるが、多少勇気があり過ぎるというか、静観でよくない?というタイミングでも無理目にアタックを仕掛けて結局2位、という場面が多い2位ハンター。今日の世界選手権では優勝候補に名前が挙がっているが果たして・・・。
現在のベルギー人選手の中ではジルベールと並ぶ有力選手なのだが、ジルベールボーネンの2人に華がありすぎて地味な印象は拭えないのがちと可哀想だなと思う。



◆10位 ダニエル・マーティン アイルランド パンチャー キャノンデール・ガーミン→エティックス・クイックステップ
すっごい眠たそうな目が特徴。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュジロ・ディ・ロンバルディアという二つのモニュメントを制した名パンチャー。上り坂でのアタックにはめちゃめちゃ強い。グランツールでも1回7位に入ったことはあるのだが、どっちかというとステージ優勝を狙うタイプ。来年はエティックスに移籍ということで、アルデンヌ系クラシックでエースを担うことが期待される。



◆9位 アレクサンデル・クリストフ ノルウェー スプリンター カチューシャ
デーゲンコルプと並ぶクラシック系スプリンターとして才能を開花させた北の偉丈夫(このフレーズ使ってみたかった)。2014年のミラノ〜サンレモに始まり、2015年はツアー・オブ・オマーンやらパリ〜ニースやら勝ちに勝ちまくり、現時点でUCIワールドツアー最多勝。さらにロンド・ファン・フラーンデレンを制覇してモニュメント2勝目を加えた。モニュメントっていうのは、ワンデーレースの最高峰ね(5つある)
ノルウェー人には多いのだが、こいつも割と上れるスプリンターである。その分平地でのピュアなスプリントはキッテルたちトップクラスにやや劣る。



◆8位 ペテル・サガン スロヴァキア スプリンター/パンチャー ティンコフ・サクソ
2012年、初出場のTDFで22歳にしていきなりステージ3勝とポイント賞を獲得。そのまま4年連続でポイント賞を獲得している万能スプリンター。本格的な山岳クライム以外はとにかく何でもできる。最近は何をやっても2位止まりなのにポイント賞はとれちゃう(上れるから)ので、ステージ優勝が無いのにポイント賞ってのもねえ・・と批判されていたが、今年のTDFではめちゃめちゃに逃げまくるわ(スプリンターは普通逃げません)、山は登るわ(普通登りません)、独走を始めたプラサを誰もおっかけないのに業を煮やして時速90kmで山を下るわの大活躍で、もうここに至っては批判はできないわというレベルに達してしまった。
表彰式でポディウムガールの尻を揉んだり、ウィリーでゴールしたり、中間スプリントを取りに行ったスプリンター仲間に「このまま逃げよーぜ」と冗談かましたり(人数的にも脚質的にも絶対に逃げ切れないし逃げる気もないのであり得ない)、1大会に1回は必ずジョークを挟まないと気が済まない男。体格もキャリアも顔もイブラヒモヴィッチっぽいのだが、性格はお人よしらしい。
(追記)2015年の世界選手権優勝。「サガンは将来どんな選手になるのか?(グランツールの総合を目指すのか?)」というテーマがよく議論になる選手だが、25歳にして自転車界最高の栄冠の1つをまた手に入れてしまった。



◆7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ イタリア オールラウンダー アスタナ
TDF、ジロ、ブエルタの全てを制したイタリアのエースであり、「ファンタスティック4」の一人に数えられる男。2014年のTDFではコンタドール、フルームという最大のライバルがリタイアしたこともあるが、2位以下に圧倒的な差をつけて優勝した。登坂力ではフルーム、キンタナに僅かに劣るが、下り坂がめっちゃ速い。
今年のジロでは落車して遅れたところをチームカーに掴まって戻ろうとし、ばれてあえなく失格。その姿はニーバリワープと名が付いたとか。その後も「チームが僕を待ってくれなかった」「みんなやってる」「僕はあの絶望的な状況から勇敢にもたった一人で立ち向かおうと・・・!」みたいなコメントを出しまくり、全く反省していないところを見せ付けた。しかも第2エースであり、子分格だったアルーが総合優勝。さぞ気まずかろうと思われる。



◆6位 ルイ・コスタ ポルトガル オールラウンダー ランプレ・メリダ
2013年に世界選手権を制してホアキンを大泣きさせた男。ツール・ド・スイスを3連覇したり、TDFでもステージ優勝を3度達成したりとかなりの有力者なのだが、私のようなにわかが注目する有名レースで目立たないのでちょっと影が薄い気もする。
短めのステージレースでは優勝候補に挙げられる存在だが、もうさして若くなく、この先どういう方向に進むのであろうか。いや、まあ世界選に勝ってる時点で相当なキャリアなんだけど。



◆5位 ナイロ・キンターナ コロンビア クライマー モビスター
「ファンタスティック4」の中でも山岳での登坂力は最強と目されるコロンビア人。見た目の圧倒的村育ち感から、日本語のネット上では「村長」と呼ばれている。またお母さんも村っぽいんだこれが。全然知らないので失礼なのだが、貧困に耐えてプロとして成功し、お母さんに家を買ってあげた感が半端無い。
とにかく山に強く、他の選手がペースを落とすような急坂でもアタックを繰り返せる。ファン何とか4の中でも、山岳最強はキンタナ、というのが世界的な認識のようだ。
すでにジロでは優勝1回、TDFでは2位2回、ブエルタでも4位に入っており、アルーとともに次世代のグランツールをリードしていく存在と思われる。



◆4位 アルベルト・コンタドール スペイン オールラウンダー ティンコフ・サクソ
ぶっとい眉毛がトレードマーク。TDF2回、ジロ2回、ブエルタを3回制しており、実績で言えば世界最高と言ってよい存在。もちろんファンタスティック4の一人である。
山岳ではダンシング(いわゆる立ち漕ぎ)でグイッグイ登っていく上、TTもまじ強。今年のジロではトラブルに付け込んで差を広げたアスタナ勢を一人で粉砕し、アスタナの若い衆(アルーとランダ)に「お前ら調子乗んなよ」というメッセージを強烈に叩きつけた。
勝った時はピストルをバキューン!とするポーズがお気に入りで、全然似合ってないという声も気にせずやり続けている。あれ、引退までやるんだろうか。



◆3位 クリス・フルーム イギリス オールラウンダー スカイ
今年のTDF王者であり、ファンタスティック4最後の一人。下を見ながらシャカシャカ走る変わったフォームだが、登坂力はとにかく強烈。インターバル的な登りでのスプリントにも強い上、一回引き離してもゾンビのように復活してくる。その上TTにも強く、感情の薄い顔と相まって憎たらしいことこの上ない。
性格的にも負けん気が強く、アシスト時代にエースのウィギンズに「お前おっせえんだよ俺にエース譲れ」とぶち上げたことがある。あまりの強さからフランスでは人気が無く、今年のTDFでは観客から尿をひっかけられたりしていた。さすがにそれは酷過ぎるわ。



◆2位 ホアキン・ロドリゲス スペイン クライマー/パンチャー カチューシャ
激坂めちゃめちゃ上りおじさん。小さい。30を過ぎてから坂のスペシャリストとして開花し、グランツールでのステージ優勝14回、ジロ・ディ・ロンバルディア2回、フレーシュ・ワロンヌ1回、UCIワールドツアーのポイントランキングでも1位が3回と勝ちまくっている。グランツールで勝つにはTTがさほど速くなく、長い山への対応力もやや不足している感があるが、毎年確実にポイントは取ってくる。今年のTDFではとあるステージのコースデザインを任されたが、余りにも山岳がきつ過ぎて自分も対応できなかったというお茶目なおじさん。



◆1位 アレハンドロ・バルベルデ スペイン オールラウンダー モビスター
人呼んで「エル・インバティド(打倒不可能)」。またの名を「バルベルデさん」「バルベルデ師匠」「バ何とかさん」。このあだ名だけで大体キャラがわかりそうだが、めちゃめちゃ強くて年俸も貰っている割に、ポカミスが多い愛すべき男。これまでの罪状としては、
「レインジャケットをチームカーまで返しに行っている間に集団に置いていかれる」
「終盤ホアキン&自分vsニーバリ(vsルイ・コスタ)の状況でニーバリを警戒し過ぎ、ルイ・コスタのアタックを放置してみすみす惨敗」
「山で『もう俺は限界だ』と言い続け、散々若手のピノに前を牽かせ続けて最後の30mでフル加速して先着」などセコいエピソードが並ぶ。


とはいえクラシックからグランツールまで1年を通して活躍できる引き出しの多さとタフさは群を抜いており、とくに総合系ライダーとしては圧倒的にスプリント力があるため、アルデンヌ系クラシックでは最強に近い存在。
御年35歳だが、今年のTDFでもエースのキンタナをアシストしてるんだかしてないんだかよくわからない自由な動きで大会を盛り上げた。