2015/16夏 移籍に関する所感 その2 マンチェスター・シティ【補足】


シティに関する記事で「あんなに獲得してFFPに引っ掛からないのか?」という疑問について書こうと思っていたのだが、サッカーとファイナンスについていつも素晴らしく判りやすい記事を投稿しているSwiss Rambleにドンぴしゃな解説が投稿されてしまった。Rambler氏、さすがの判りやすさである。
The Swiss Ramble: Manchester City - I Threw A Brick Through A Window
とはいえ英語では読むのがめんどくさいという人もいるかもしれないので、一部引用しつつ、シティとFFPの謎について解説したい。謎というほど大したものでもないが。


結論は以下の通り。
1.「シティはFFPに喧嘩を売っている」というのは、そんなに意味がある表現では無い。むしろ姿勢としては、ははーとひれ伏している方が近い。まあスレスレの通過を狙っているのかもしれないが、とにもかくにも、守ろうとはしている。
2.「シティは今シーズンあんなに補強して、FFPに引っ掛からないのか?」−正確に言えば、これは現時点では判らない。FFPは過去3年間の累積の数値を評価対象とするからだ。だから、この先の動向によっては、またFFPの制裁対象となる可能性はある。ただ確かなのは、シティの首脳陣は、今シーズンの選手売買の結果は、FFP遵守の上で大きな問題にはならないと考えているであろうということ。なぜなら、今シーズンの移籍活動の結果を加えてもなお、2015年以降のシティの財務パフォーマンスは、それまでよりはむしろ改善する可能性の方が高いからだ。
3.「シティはFFPが緩和されたから、今夏あれほど選手を獲得できた」―これは半分だけ正しい。2014/15シーズンのシティは、選手を獲得するために支払える費用に制限を課せられていた。(£49M)。これが今年の7月に解除されたため、今シーズンは(売却を差し引いた)ネットで£110Mもの大金を投じることが出来た。一方で、今年5月にFFPのルール自体が緩和されたが、これは実はシティにはほとんど関係なかった。


読むのがめんどくさい人は、ここで帰ってもおk。あとは少し細かく解説しているだけなので。






from FIFAマスター(宮本恒靖) サッカー選手の価値と財務諸表 :日本経済新聞
話に入る前に、前提知識として、サッカー選手がクラブの財務諸表にどう計上されるかについては、ツネ様が語るこの記事を参照されたし。補足を加えつつ要約すると、


・サッカー選手は、獲得時に支払った移籍金がB/Sに資産として計上され、契約年数に応じて定額で償却され、費用としてP/Lに計上されていく。

・例として、ラヒーム・スネークリング選手(仮名)のことを考えてみる。スネークリングが£50Mの5年契約で獲得されたとすると、毎年の減価償却(P/Lに費用として計上される額)は£10M(50/5)になる。首尾よく5年契約を全うすると、償却が完了し、資産上の価値はゼロになる。

・仮にスネークリングが3年在籍したところで、移籍したいと騒ぎだしたとしよう。代理人はあることないこと吹聴し、クラブはすったもんだの末にスネークリングを売却することを決意する。なんとか売却先が見つかり、スネークリングを£40Mで売り払ったとする。このとき、会計上の売却益は、£40M(売却時に相手が支払った移籍金)―£20M(B/Sに残っている残存価格。£50M―£10M×3年間)で、£20Mになる。

・ただし、契約が延長された場合、話は少しだけややこしくなる。その場合、残存価値は延長された契約期間に応じて償却されることになる。例えばスネークリングが契約から3年後に、(当初の契約終了年から)さらに2年契約を延長したとしよう。この場合、すでに償却している£30Mを引いた£20Mは、残り4年間(2年+2年延長)に渡って償却されるため、毎年P/Lに計上される原価償却費は£5Mに下がる。





◆£142Mの移籍金のうち、毎年費用計上されるのは£26.5M“のみ”



Swiss Rambleを一部引用すると、「シティはグロスで£141.5Mの移籍金を支払った(デブライネに£54M、スターリングに£44M、オタメンディに£28.5M、デルフに£8M、ロバーツに£5M、そしてエネス・ユナルに£2M)が、毎年P/Lに計上される減価償却費は、“たった”£26.5Mにしかならない。例えば、デブライネへの£54Mの移籍金は契約期間の6年間に渡って償却されるため、年間の減価償却費は£9Mだ。


注)この数字はあくまで推計。なぜなら、報道するメディアによって移籍金の額はまちまちだからだ(いつの時点の為替を使っているかにもよる)。
ただし、議論の材料としては十分に正確であろう。また、上記の計算からは移籍金のアドオン(ボーナス分)は除いている。これらは将来の動向によって額が変化するため、すぐに計上されるものではないからだ。


また、報道されている給与を基に考えると、今夏の獲得によってシティの給与は年間£31.7M増加する。減価償却費と合計すると、£58.2の費用増だ。」

In this way, although City had gross spend of £141.5 million (De Bruyne from Wolfsburg £54 million, Sterling from Liverpool £44 million, Otamendi from Valencia £28.5 million, Delph from Aston Villa £8 million, Roberts from Fulham £5 million and Enes Unal from Bursaspor £2 million), the annual player amortisation shown in the books is “only” £26.5 million. As an example, De Bruyne’s £54 million is equivalent to £9 million amortisation, because he is on a six-year contract.

Caveat: these figures should only be considered as indicative, because various different numbers have been reported in the media for transfer fees (partly due to exchange rates used), but they should be sufficiently accurate to illustrate the argument. I have also excluded any transfer add-ons from the calculation, as these are dependent on future achievements, so are not immediately included in the accounts (except in the notes as contingent liabilities).

City’s wage bill will also increase by £31.7 million a year for these purchases (again based on widely reported weekly wages), leading to a total increase in annual costs of £58.2 million.


◆売却とローンによって、£49.5Mの費用削減


一方で、選手の売却や放出を行えば、当然ながら費用は減る。ネグレドナスタシッチ、ロペス、レキク、シンクレア、ボヤタ(!)の売却価格(£50.5M)と、ジェコ、ヨヴェティッチ、デナイエルのローン価格(£5.2M)を合わせると£55.7M。B/Sに残った帳簿価格を差し引くと、まず2015年限りの売却益として£40.2Mが生み出される。そして、今後計上されるはずだった減価償却費として、年間£8.3Mが浮くことになる。


さらに、上記の選手に加え、フリーで放出したミルナーランパード、リチャーズ、ローンで放出したジェコらの給与が浮くことになる。ローンで放出した選手の給与はローン先が持つという前提に立てば、年間の給与は£41.2Mの削減だ。つまり、合計で£49.5Mの費用が削減されることになる。
(ここは帳簿価格の試算がめんどくさいのでSwiss Rambleの計算をそのまま使っております)


まとめると、2015年夏の移籍によって、シティは年間£58.2Mの費用増があった一方で、年間£49.5Mの費用が削減されたので、差引は£8.7Mの増加に留まる。さらに、売却益として£40.2Mが加わると考えれば、今シーズンの移籍によって収支がさほど悪化しないことがわかるだろう。(例えば、2014年の決算において計上された、FFPの制裁金£16.3Mより小さい)




◆ただし、当然ビッグサマーは後を引く。一夏の恋は火傷する


ここまで、今回の移籍による費用増が、恐らく多数の人が想像するよりも小さいということを見た。ただし、当然ながら£141.5M(アドオンを含めると£152M)の移籍金は決して小さい額では無い。
Transfer Leagueのデータに従えば、シティが支払った移籍金としては2010/11シーズンの£154.8Mに次ぐ大きさである。この移籍金は今後5年から6年、契約が延長されれば10年近くに渡って減価償却費としてシティのP/Lに計上され続けるので、当然ながら毎年このような移籍を続けていくことは出来ない。
給与を下げることは難しいから、もし出来るとすれば、売上が減価償却費と給与を大きく上回るペースで増加した場合だろう。
現時点でその兆候は無いが、仮にFFPの制約がさらに厳しくなった場合(例えば、移籍金の額そのものに上限が課せられるとか)には、今夏の移籍が生む負担はさらに大きくなる。


そのシティ史上最高額のシーズンだった2010/11における獲得選手(ヤヤ・トゥレコラロフ、シルバ)の減価償却費は2014年を持って償却が完了するはずだったが、ご存知のようにこれらの3選手は契約を延長している。Swiss Rambleの試算によれば、上記3選手と、その他契約を延長している選手(ジェコ、アグエロ、クリシ、ナスリ)の分の減価償却費は、契約延長によって年間£14.4M削減されるとのことである。ただし、その分当初から償却期間は長くなるため、2018/19シーズン(2019年決算)まではP/L上に残り続けることになる。





◆更なる売上増の見込み


FFPの順守において、売上増加は費用削減と同じ価値を持つ。シティはこの点において良いパフォーマンスを見せていることは以前書いたが、シティのみならずプレミアリーグのクラブがこれだけ移籍市場に金を投じる背景には、2016/17シーズンから始まる巨大な放映権契約がある。Swiss Rambleの試算によれば、2014/15シーズンに2位だったシティは、プレミアリーグの放映権料として£98.5Mを受け取っているが、2016/17シーズン以降は同じ順位でも+£51.5M、つまり£150Mを受け取ることになる。


また、チャンピオンズリーグの放映権料も増加している。こちらもSwiss Rambleの試算だが、同じベスト16での敗退でも、2014/15シーズンにシティが受け取った賞金は、2013/14シーズンから約€7M増の€42Mに達するということだ。(ポンドに直すと、だいたい£30.4M)。加えて、2015/16シーズン以降はさらに放映権料が増加するため、同じベスト16でも€20Mの収入増が見込まれる。勝てるかなあ・・・


スポンサー収入においてもシティのパフォーマンスは良い。過去5シーズンの成長で、イングランドではまんゆに次ぐスポンサー収入を得るクラブとなったが、これはオーナー関係のスポンサー(エティハド航空やエティサラット)だけの貢献ではない。ぶっちゃけ現行のエティハドとの契約(スタジアムの命名権とユニフォームで年間£40M、シャツだけなら£20M)は他クラブのメインスポンサー契約―まんゆのシヴォレー(年間£47M)、チェルシー横浜ゴム(同£40M)、アーセナルエミレーツ(同£30M)ーに比べれば見劣りしている。
ただし、2回も優勝してCLも安定して参加できるようになったんだから、思い切って2倍にしてちょ!という話が進んでいるとかいないとか。いずれにせよ、アラブに関係ないスポンサーたち(SAP、ヘイズ、日産、LGなど)との契約は増加している。


(上位5クラブのスポンサー収入の推移)


付け加えると、今シーズンはエティハド・スタジアムの座席が7,000席増設されたので、その分も収入増が期待できる。
シーズンチケットの価格がリーグで最も安い方だということもあり、シティのマッチデイ収入はトップ5の中で一番低いのだが、その点が多少は強化されそうだ。




◆今後のFFPとのお付き合い


2014年にシティがFFPに抵触した直接的原因は、「2010年6月以前に獲得した選手に関する費用について、UEFAとの見解の相違があった」である。シティ側はこの£80Mについて、FFPの対象から除外できると考えていた(というのも、UEFAがルールを変更したのはFFP導入後の2013年だそうなので)が、これが認められなかった。ちなみにリヴァプールFFPに関してはシティと双子のような存在で、ともに調査の対象となったが、リヴァプールは引っ掛からなかった。Swiss Rambleの記述を引用する。


「過去3年間における税前損失の合計値(£89M)は、UEFAが定める下限値である€45Mを明らかに超過していたが、リヴァプールFFPに何とか引っかからずに切り抜けた。(中略)恐らく最大の理由は、2010年6月以前に獲得した選手の給与を、FFPの計算から除外できた可能性があるということだ。理論上は、この措置は2012/13シーズンの損失が前シーズンより小さくなっていた場合にのみ適用されるのだが、リヴァプールはそれに該当しない。しかし、2011/12シーズンが10カ月分のみの変則決算だったことから、年間ベースに直すと(2011/12シーズンの)損失額がより大きかったであろう、という試算に基づいて議論が行われたのではないかと思われる」


Liverpool have managed to avoid any FFP issues, even though their cumulative pre-tax loss of £89 million for the last three seasons is clearly higher than UEFA’s €45 million limit (assuming the owners cover the deficit by making equity contributions). This is because UEFA permits some “good” costs to be excluded from its break-even calculation, such as stadium development, youth and community development and goodwill amortisation.

However, the clause that has probably most helped Liverpool is the possibility to exclude the wages for players signed before June 2010 (when the FFP rules were introduced). Theoretically, this would only be allowed if Liverpool’s losses had reduced from 2011/12 to 2012/13, which was not the case, but as the 2011/12 accounts only covered 10 months, the argument must have been that it would have been higher on an annualised basis.


話が逸れた。シティについて言えば、2013/14シーズンに€20M、2014/15シーズンは€10Mまでの損失というリミットを課せられている(他のクラブは€30MまでOK)。
ただし、これはシティにとっては恐らく問題にならない。シティの2013/14シーズンの最終損失は£23Mだが、スタジアム建設の費用と、FFPの制裁金£16Mは除外できるからだ。2014/15シーズン以降は最終利益段階での黒字化が見込まれる。


(シティのP/L)



ちなみに今年5月にFFPが緩和されたが、その条件は、「UEFAに対し、収支トントンに達するという説得力のあるプランを“新しいオーナーが”提示し、承認を得た場合」であって、シティには関係ない。要するにシティやPSGみたいなオーナーに対する参入障壁を高くし過ぎるのは問題だ、とUEFAが考えたのだろう。
Michel Platini: Uefa to 'ease' financial fair play rules - BBC Sport









長くなった。今シーズンのシティの移籍については、もっとピッチ内に近い方面で話がしたいのだった。それはまた次回。
(source: The Swiss Ramble, Transfer League)

2015/16夏 移籍に関する所感 その1 マンチェスター・ユナイテッド

この夏も精力的に動き、獲得費用は£111M。売却益*1を差し引いたネットの費用では£41Mとある程度落ち着いたが、それでも獲得費用、ネットともにシティに次ぐ2位である。
ファーガソンの最終シーズンだった2012/13シーズン以降、まんゆは比較的積極的な投資を続けており、獲得費用は12/13シーズンに(チェルシーに次いで)2位、13/14は3位、14/15シーズンは1位。12/13シーズン以降の4年間の獲得費用は、シティに僅か£9M劣る程度である。


(獲得費用の推移)



(2012/13シーズン以降の獲得費用合計)



ただ今シーズンの移籍市場にはまさしくファーガソン後のまんゆの苦労が表れていて、その象徴がネット獲得費用の少なさ。
£111Mも使ったわりにネットがたった£40Mに落ち着いたのは、当然£71Mも売却しているからである。£71Mも売却したからには当然中身は有力選手であり、ディ・マリアRvPチチャリート、ナニ、エヴァンズ、ラファエウといった、かつてはスタメンを担った選手が並ぶ。


(2014/15シーズン 売却リスト)



(2015/16シーズン 売却リスト)



(サッカー界の中では)巨大なキャッシュ・マシーンであり、アーセナルのように選手売却で利益を生み出す方針でもないまんゆには、売却益で収支を合わせる必要は薄い。
まともに売却しなかった2013/14でさえ、£62Mの税前・利払い前利益を生んでおり、利息支払と元本返済には十分な原資だ。然るに、2014/15シーズンに£40M、今シーズンに£71Mという売却を行っているのは、主力を大々的に入れ替えている、というか入れ替えざるを得なかったということである。





まず獲得した大物選手があまりフィットしていないということ。
クラブ史上最高額の選手であり、現代における最強のサイドハーフインサイドハーフの1人であるディ・マリアは、怪我もあって局所的な活躍に留まった。£28Mで獲得したフェライニはチーム戦術の核として機能した試合もあるが、絶対的主力とは言い難い。£37Mのマタは悪くないプレーをしていると思うが、アザール、シルバ、サンチェスといった競合チームのエースMFと比べると少々見劣りすると言って差支えなかろう。
過去10年程度遡っても、大金を投じた≒タイトル獲得の鍵となることを期待して獲得した選手が全員活躍しているとは言い難いが、近年の獲得が大ヒットとは言い難いことへのエクスキューズにはならない。




また、売却額が積み上がっているもう一つの理由は、主力になり切れなかった中堅選手を大量に放出していることだ。
昨シーズンにはマケダ、ビュットナー、香川、ウェルベックアンデルソン、ザハ。今シーズンはクレヴァリー、ナニ、ラファエウエヴァンズ、チチャリート。いずれも20台中盤から後半で、アカデミー育ちか、ファーガソンが得意だった“成熟し切る前に獲得して、チーム内で一流に育て上げる”ことを目指して獲得された選手たちである。彼らはいずれも、ファーディナンドヴィディッチ、エヴラ、ギャリー・ネヴィル、スコールズといった名選手の後継者となることを期待されていたと思われるが、結局絶対的な主力にはならなかった。アンデルソン、ナニ、ラファエウエヴァンズ、チチャリートはレギュラーとして優勝に貢献したシーズンもあったけど。ナニは1シーズンだけ最高に上手かったなあ。
いずれにせよ、このクラスの選手を大量に手放すということは、チームの大部分を作り替えなければならない状況ということだ。これらの選手が絶対的な主力に育っていれば、ファーガソン退任後のダメージも少なかっただろうが、「死と再生」プロセスというのはなかなか上手くいかないものであるな。





まとめると、移籍市場での目利きが想定通り機能していないのではということと、獲得後にチーム内でフィットさせ、主力に成長させるプロセスが上手く機能していないのではということ。選手の獲得費用および給与には収穫逓減が働くであろうことも踏まえると、金を積めば解決するという問題でもないので悩ましい。財政的なアドバンテージを活用しづらい部分だ。
まずは今シーズン以降、デパイやマルシャル、シュナイデルランが順調に活躍できるか注目したい(綺麗な締め方)

*1:ちなみに、ここでいう売却益は会計上の定義ではなく、単純に売却時の移籍金とご認識ください。

2015/16 マンチェスター・シティ 選手名鑑


サッカーにあんまり興味ない人々に「シティ?って有名なの?誰がいるの?(まんちぇすたー・ゆないてっどじゃないの?)」と尋ねられた際に困るのがシティファンの常なので、選手名鑑を書きました。写真の権利関係は、ほら、怒られたら取り下げるというやつ。




【GK】

◆1 Joe Hart ジョー・ハート 1987.4.19 194cm83kg イングランド代表 

10代の頃にシュルーズベリーからやってきたGK。07/08シーズンに正守護神の座を掴み、その後アブダビ資本で獲得したシェイ・ギヴンに一度はポジションを奪われるも、バーミンガムでのローンを経て実力で定位置を奪い返した。イングランド代表の正GKでもある。
クラブへの忠誠心も深く、第3キャプテンかつチーム随一のバカとしてチームを支える。持ち味は頭上のクロスへの力無い猫パンチと、スタンド目がけて一直線に飛んでいくロングフィード


密閉された車内で放屁を敢行するも、キャプテンガンギレ。
D




ヤーヤー!ヤーヤー!!ヤーーーーヤーーーー!!!!!ヤーーーーーーーーヤーーーーーーーー!!!!!
ヤァァァァァァヤァァァァァ!!!!!

    〃〃∩  _, ,_
     ⊂⌒( `Д´) < ヤーヤー!!!
       `ヽ_つ ⊂ノ

ヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!





◆13 Willy Caballero ウィリー・カバジェロ 1981.9.28 185cm83kg アルゼンチン代表


サビオラダレッサンドロコロッチーニ、フリオ・アルカらとともにワールドユースを制したGK。
実力はリーガ時代に証明済みだが、ハートを押しのけるほどでもなく、シティではほとんど出番が無い。
第2GKに適当なのを置いておくと大事なところで困る、というのはファビアンスキと愉快な仲間達が教えてくれたことだが、それにしても少々勿体ない気はする。




◆29 Richard Wright リチャード・ライト 1977.11.5 188cm89kg イングランド代表 


それなりの経歴、ホームグロウン適用、出番が無くても文句言わない、ベン・アフレック似という第3GK界のペレ的存在。
高身長、高収入の独身37歳。今年もおじさんは週給10,000ポンドでスタンドを温める。真面目に言うと、コーチ業にも積極的だそうで、そのままコーチに就任するのも良いかもしれない。





【CB】

◆4 Vincent Kompany ヴァンサン・コンパニ 1986.4.10 191cm85kg ベルギー代表


獲得した頃はもっさりしたアンカーだったが、DFラインにコンバートされて以降、2010年代のプレミアリーグを代表するCBとして名を上げた。11/12シーズンのリーグMVP。
しかし昨シーズンは金属疲労が祟ってか、出場すればファールと致命的なミスを連発、「アウェーのストーク戦の方がバルサより難しい」と発言してバルサにボコられるなどの凡ミスを繰り返し、今やファンフォーラムで「疫病神」「予約済みのイエローカード」とまで評されるようになってしまった。しかし「ストークの方が難しい」て、どういう料簡だよ。ストークも困るだろ。
頻繁にポジションを離れて相手を潰しに行くスタイルは、心身両面のコンディションが崩れれば即座にチームの時限爆弾。チームの守備組織の拙さもあるが、今シーズンはプレースタイルの適応を期待したい。


◆26 Martin Demichelis マルティン・デミチェリス 1980.12.20 184cm78kg アルゼンチン代表


マラガ時代からペレグリーニの寵愛を受けるDFラインめちゃめちゃコントロールおじさん。緻密なライン操舵で山ほどオフサイドを取っていく。
ぶっちゃけ、勝手にポジションを離れるコンパニよりも、エゴが無いマンガラの方が組みやすそうである。
スピード不足やポカを指摘されつつも、シティでは最も頼れるCB。えらくふてぶてしいパス出しで組み立てにも貢献する。
得意技は自分の凡ミスで迎えた大ピンチを救ってくれたハートに「お前が悪いんやで」みたいな顔で小言を言うこと。


◆20 Eliaquim Mangala エリアキム・マンガラ 1991.2.13 187cm74kg フランス代表


バッファローのようなタックルと小鹿のようなパス出しが特徴のCB。3,200万ポンドという大金を費やして獲得したが、1年目は不安定なパフォーマンスが目立った。
デミチェリスとコンパニが自分を過信するタイプなのに対し、マンガラは徹底的に自分に自信が無く、慎重に行こうとし過ぎてミスをするタイプ。ボール持った時オドオドし過ぎ。
あの身体で空中戦にさほど強くないのも、恐らくは闘争心があまり強くないせいかと推察するところ。
とは言え昨シーズン最終盤は徐々に安定し始めていたので、成長に期待。ジエゴ・コスタを叩きのめしたポテンシャルを常時発揮してほしい。


◆28 Jason Denayer ジェイソン・デナイエル 1995.6.28 184cm70kg ベルギー代表 


アンデルレヒトから引き抜いた若手CB。昨シーズンはセルティックにレンタルされ、リーグ優勝に加えてベストイレブンと最優秀若手選手賞に選出された。
さらにベルギー代表にもデビューしてフランス代表相手に活躍してしまい、今や代表監督のヴィルモッツが「あいつが慌ててるところなんて見たことがない」とか、元代表で大分に在籍していたスターレンスが「彼はヴァランに匹敵する選手」とか囃し立てたため、すっかりファンの期待値が上がり切ってしまった。お前らマジでいい加減にしろよ。


実態としてはスプリント力と無鉄砲なボールの持ち出しなど見るべきところはあるものの、ポジショニングとカバーリングに難あり、うかつに裏を取られるシーンも多い。
正直現状でいきなり主力級の働きを期待するのはお互い不幸な結果しか招かないので、長い目で見守っていきませんか。


◆30 Nicolas Otamendi ニコラス・オタメンディ 1988.2.12 183cm81kg


バレンシアから£31.7mで引き抜いたCB。昨シーズンはリーガのベストイレブンに選ばれたらしい。とりあえず、めっちゃ生肉食いそう。





【RB(右サイドバック)】


◆5 Pablo Zabaleta パブロ・サバレタ 1985.1.16 176cm70kg アルゼンチン代表


右SBのレギュラーを務める自律思考型猟犬サイボーグ。トレーナーのシルバ氏が手綱を握っている試合での攻撃力はリーグ随一。
中外自在のフリーランで最近流行りのトレイラーゾーン、英語で言うところのChannelを攻略する。外を回ってなんぼ!の日本のSBには見習ってほし・・・いや、まあ、いい。
燃料が頭髪なのは公然の秘密である。シティファンからの信頼は絶大。


◆3 Bacary Sagna バカリ・サニャ 1983.2.14 176cm72kg フランス代表


昨シーズン、アーセナルからフリーで加入した右SB。フランス代表ではレギュラーだが、シティではサバレタがいるので控え。
とは言え守備力はサバレタより信頼されており、バルサ戦等相手が強い試合ではスタメンを務めることもある。攻守で役立つ空中戦の強さもあり、もっと上手に活用できるのではないかと個人的には思う次第。
今シーズンはサバレタのコンディション不良もあり、開幕からレギュラーに抜擢され、好調を維持している。嫁はゴージャスな美人だが、水着はなんていうか、金太郎リスペクトスタイル。





【LB(左サイドバック)】

◆11 Aleksandar Kolarov アレクサンダル・コラロフ 1985.11.10 187cm80kg セルビア代表


人呼んでAK47セルビアロベカル、といういかにも日本人が好きそうなあだ名の左サイドバック
とんでもないスピードと曲がり方のクロスが最大の持ち味だが、攻撃の局面では常にいてほしい場所にいるポジショニングの良さも魅力。ちなみに守備ではいてほしい場所に大体いない。
常にしかめっ面だが、祝福力はチーム随一。遠い場所からでも祝いに来てくれる。



◆22 Gaël Clichy ガエル・クリシ 1985.6.26 176cm63kg フランス代表 


昔サッカー雑誌の原稿書きみたいな仕事をしていたことがあるのだが、その頃からクリシについて何か書くとき、私はいつも「フランス人なのにホームグロウン適用」と書いている。
アーセン・ヴェンゲルお得意の「10代のフランス人たぶらかし」で育てられた選手だからだが、それ以外はあんまり特徴が無いというか、キャラが無いのだな。今一つ。

アーセナル時代にはベストイレブンを取ったこともあるので総合的にはプレミアでも上位クラスのサイドバックだが、コラロフのように判りやすい武器はない。
ただアーセナル育ちだけあってボール扱いは安心できるし、スピードある攻め上がりとクロスでサイド攻略にも活躍はしてくれる。あと、アーセナル出身にはありがちなのだが、空中戦にはとっても弱い。




【CMF(中盤センター/ボランチ)】

◆6 Fernando フェルナンド 1987.7.25 183cm74kg ブラジル


ブラジルコンビの陰気そうな方。ボールを絡め取る姿から「蛸」の異名を持つと評判のボランチだったが、1年目はどっちかというとプレーの質がタコだった。
無理目なボールに喰い付いては交わされるシーンが目立つ。ボールを持ったときの慌てっぷりはシティのテクニシャン勢にあるまじき水準だが、昨シーズンは一回攻め上がってアウトサイドで目玉が飛び出るような高精度のクロスを上げており、あの一瞬だけ中身がクアレスマだったのではないかと私の中で話題。
守備型ボランチだが、ぶっちゃけ守備固めではあまり使われない。




◆25 Fernandinho フェルナンジーニョ 1985.5.4 176cm67kg ブラジル代表


ブラジルコンビの陽気そうな方。一人で潰せて相手も交わせ、パスも正確ミドルも強いというスーパーボランチ。レオシルバの強化版のような男である。
昨シーズンはブラジルW杯での虐殺が響いてか、微妙なパフォーマンスに終始したが、今シーズンは開幕から全開。割と危ないファールが多く、こないだはジエゴ・コスタにエルボーをキメて殺されかけていた。



◆42 Yaya Touré ヤヤ・トゥレ 1983.5.13 191cm90kg コートジボワール代表


とっても扱いづらいキング・オブ・アフリカ。体躯を活かしたボールキープと前を向いたら止められないドリブル、ガードごと吹っ飛ばす理不尽シュートにはライオンキングな風格が漂うが、ちょっとすばしこいやつにドリブルで仕掛けられたときの対応はナマケモノ級に鈍い。まあナマケモノ、アフリカにいないんだけどさ。

そんなヤヤのパフォーマンスを左右するのは愛。Loveである。昨シーズン序盤は(一昨年)あれだけ優勝に貢献したのに扱いが悪い!愛が無い!!と騒いで低調なプレーに終始したが、アフリカネイションズカップで離脱した際に全くチームが勝てなかったことで「やっぱりヤヤがいないとダメだ」という空気が蔓延。サポーターの愛を取り戻し、それなりに復調した。
今シーズンはW杯もネイションズカップも無く、万全の体調でCan you feel the love tonight出来るであろうか。



◆18 Fabian Delph ファビアン・デルフ 1989.11.21 174kg60kg イングランド代表


名門リーズ育ちのセントラル・ミッドフィールド。いわゆるボランチ
リーズから移籍して苦節5年、ようやくアストン・ヴィラの中心に成長し、昨シーズンの残留劇を支えたが、シティからのオファーに対して一度断ってファンを安心させてからの、急遽翻意して加入。蛇蝎のごとく嫌われる結果となった。まあ当然だが。



というかスターリングよりよっぽどひどいことをしている気がするが、スターリングが注目を集めたせいでさほど取り上げられておらず、色々考えるとスターリングの移籍で一番得をした人物ではないだろうか。
「彼の忠誠心には感動した」と方々で言い回っていたシャーウッドは思いっきりコケにされた形になってしまったが、許すらしい。大した男である、シャーウッド。人としては。


守備も出来るし、いかにもイングランドの中盤っぽいスピードのある(訳:勢いだけの)攻撃参加もあるのだが、こう、有り体に言ってシティでプレーできるような選手かしらという疑問は残る。
ホームグロウンだし、安いし、獲っておいても損は無かろうという空気は感じなくもない。ホームグロウンは一応足りているので、獲らなきゃ死ぬというわけでもなかったのだが。


今のところ、左サイドの守備要員としても考えられているようだ。



◆36 Bruno Zuculini ブルーノ・スクリーニ 1993.2.2 178cm72km アルゼンチン


2014年に加入した若いアルゼンチン人。中盤の底からゴール前まで良く走るボランチで、イングランド向きには見える。3センターの右やってそうというか。
見えるというのは公式戦で出たことがほとんど無いからで、昨シーズンはプレシーズンマッチで活躍し、バレンシアにレンタルされたものの、ほっとんど試合に出られずに1年が終了してしまった。
完全に上位互換のフェルナンジーニョがいるため、出番があるのかは非常に疑問である。







【AMF(攻撃的MF/サイドハーフ)】


◆8 Samir Nasri サミル・ナスリ 1987.6.26 178cm75kg フランス代表


相手を舐め腐った、かったるそうなプレーが特徴のサイドハーフ。本人はトップ下が好きで、どこで起用されようがすぐ真ん中に寄って来る。


かつては同僚ギャラスに「あいつチームでハブられてっから」と陰口をたたき、リポーターをサノバビッチと罵り、かの松井大輔に「死ね」と吐き捨てるなど行く先々でやりたい放題やっていたが、最近では妙に悟った雰囲気を出しており、業界のご意見番みたいなポジションになりつつある。バートンといい、この手のチンピラがご意見番に落ち着く減少はなぜ起こるのだろうか。代わりに彼女が「デシャンはバカ」と騒ぎ、ナスリが宥めるみたいな茶番スタイルに移行した。


昨シーズンは12月限定でスーパーナスリに進化したが、バルサにボコボコにされて意気消沈。以降殆ど起用されなかった。
今シーズンはデブルイネ加入の噂で出番が危ぶまれている、というか売られるだろと誰もが思っていたのだが、今のところ残留。リードしている時間帯に出てきて、タルそうに時間を潰すタスクを担う。




◆15  Jesús Navas ヘスス・ナバス 1985.11.21 170cm60kg スペイン代表


右サイドでボールを受けて、縦にドリブルしてクロス。それしかやらない。シティ1シンプルな業務フローの男。業務コンサル泣かせである。
押すと爪楊枝が摘まめる、キツツキの爪楊枝ホルダーがあるが、

(こういうやつ)

人類でアレに一番近い男なのではないだろうか。


イギリス中のDFにプレースタイルが露呈しているため、ドリブルで仕掛けても大体CK獲得に終わるのだが、バルサのDFだろうが19歳の名前も知らない若手だろうが、常に同じ結果なのはある種才能である。
ドリブルは抜けないし、クロスとシュートが残念、CKはさらに残念ということで、シティファンからはあまり人気が無い。デブライネ加入で割を食うのはナバスだと誰もが思っている節がある。
個人的には、ナバスのように、一人くらい単純なプレーをする選手を置いておいた方が良いと思うのだが。シルバの邪魔はしないし、守備にも走る。何より、ナバスがダメな日は右サイドの攻撃は死んでいるが、相手の左サイドも大体死んでいるのだ。相手のLBを道連れに試合から消える男ナバス。僕はスタメンを支持したい。


◆21 David Silva ダビド・シルバ1986.1.8 170cm67kg スペイン代表


みんな大好きシティサーの姫。シルバに怪我をさせた選手は2試合の出場停止と100時間の社会奉仕活動が義務付けられれば良いと思っているシティファンはたくさんいるが、本人はカウンター潰しのこっすいファールが得意である。
スペイン代表では脇役だが、シティでは押しも押されぬ大黒柱。今シーズンは得意のトップ下に固定され、守備の負担が軽減するものと思われる。
ただし、一人で勝手にプレスを掛けては後ろが連動してなくて不満顔、みたいなシーンを良く見るので、ボランチとの連携はきちんと取ってほしいところだ。




◆7 Raheem Sterling ラヒーム・スターリング 1994.12.8 168cm68kg イングランド代表


リヴァプールから駄々コネまくって移籍。もう、どこに行ってもブーイング。リヴァプールファン、かどうかは知らんが、人種差別を含んだ誹謗中傷メールが本人はおろか彼女にも届きまくったという。
しかし、どうも説得が難しそうだと見るや否やOB連中が昭和のサラリーマンみたいな説教をカマして出鼻を挫き、手塩にかけて育てた若手の主力選手を失う事実をあっという間にファンの頭から消し去って£44mをせしめて代役を補強、というリヴァプールの手腕。鮮やかと言わざるをえまい。


ピッチ内ではあっさりチームにフィットした。今まで居なかった、スピードがあってタッチライン際でプレーできる左ウィングなので、シルバやアグエロにスペースを供給してくれるのが良い。
あとボールキープ上手いのね。リヴァプールは凄い選手を育てたもんだという感慨を新たにしている。まあ途中まではQPRにいたのだが。



◆27 Patrick Roberts パトリック・ロバーツ 1997.2.5 167cm58km イングランド


フラムから今年獲得した若いウイング。イングランドのメッシ、という胡散臭いニックネームが有るとか無いとか。
サッカー選手として有能かどうかはさっぱりわからんが、とりあえず最高に素っ頓狂なドリブルをしているので、Youtubeで見る分には楽しい選手だと思われる。
正直トップチームに入れておいても出すとこがあるようには思えないが、一応背番号はもらっている。







◆17 Kevin De Bruyne ケヴィン・デブライネ 1991.6.28 181cm68kg ベルギー代表


本当に来てしまった。何でそこまでして欲しかったのかよくわからんが、獲得費用は£55mとお高い、昨年のブンデスリーガMVP。2015年夏の目玉第3弾として加入。世が世ならジダンを買ってお釣りがくる額である。
チェルシー時代から凄い凄いと騒がれる割に私が見た試合では全然活躍しないので、全く知らん間に大物になってしまった。
高校のときパッとしなかった奴が大学と社会人でやけにオラつき始めて高校時代も俺イケてたよねみたいなノリで絡んできたような、そんな感じがする。


しかも聞くところではトップ下が本職だというではないか。せっかく築かれ始めた攻守のバランス、デブライネ一人のために失ってほしくは無いのだが。
とりあえず、さすがは£55mだ、というところを見せるまでは「ナスリに毛が生えたやつ」として扱いたい。



【ST(ストライカー)】

◆16 Sergio Agüero セルヒオ・アグエロ 1988.6.2 173cm70kg アルゼンチン代表


ハムストリングさえ言うことを聞けばシーズン20点は堅い、チームの大エース。小さい割にキープ力は圧倒的で、ボールさえ足元に入れば大体なんとかする。
意外とGKとの1vs1を外すので、あれよく考えたらアグエロが決めてたら勝ってたんじゃないのという案件もあるのだが、指摘を受けることはあまりない。
レアル・マドリー様が買いたいと仰り出さないように、日々祈りと生贄を捧げるのがシティファン日課である。





◆14 Wilfried Bony ウィルフリード・ボニー 1988.12.10 182cm88kg コートジボワール代表


鬼のキープ力と空中戦に加え、フリーになるのも上手いプレミア屈指のストライカー。が、シティに移籍して以来怪我は多いわ出番は無いわで存在感は薄い。
今シーズンはジェコとヨベティッチの移籍によって、控え1番手の地位が約束された。


ブラジルW杯では森重と吉田麻也を惨殺。気持ち悪いくらいムキムキ。





◆72 Kelechi Iheanacho ケレチ・イヘアナチョ 1996.10.3 187cm77kg


U17ワールドカップのMVPを獲得したナイジェリア人の18歳という、サッカー界屈指に伸び悩みそうな肩書きを持つ若手FW。
エッジが立ち過ぎてないヌワンコ・カヌーというか、やや引いたところでボールを捏ねるのが好きで、スルーパスのセンスもある。
すでにプレシーズンマッチでは結果を出しており、今シーズンは第3FWとしてそこそこ出番はありそう。アヘ顔感のある名前に要注目。


2015/16シーズン 上位陣プレビュウ リヴァプール編

「何位になりそうか」はよくわからんので、「何位なら成功/失敗と見なすべきか」について、考えてみたいと思います。




リヴァプール


2013/14シーズンからこっち、話題を独り占めにしている感がある名門。「持ち上げるだけ持ちあげて、盛大に落とす。しかも天丼で」という定番芸のキレは増すばかりである。その大半はジェラード関係だが。本当はジェラードのこと嫌いなんじゃないのか。






とはいえピッチ外のパフォーマンスは改善しつつある。放映権料の増加と減損の削減で営業利益(Operating profit)は黒字に転換、営業キャッシュフローも約2倍に増加した。BSサイドでは僅かに(Gross Debt:2013→2014で+£9.7m)借入を増やしたが、EBITDAの2.4倍程度であり、特に問題は無い。困ってもセルの実弾としてHG適用の若手を多数取り揃えており、収益性は保てそうだ。


(売上、営業利益、営業キャッシュフローの推移)

※金額単位は全て百万ポンド





ジョージ・ジレットとトム・ヒックスの共同オーナー体制だった2009年まではとにかく負債が重すぎ、主力の売却による埋め合わせを伴わない純粋な補強ができない状態だったが、オーナーシップの交代以降財務状態は劇的に改善している。例えば2009年は有利子負債が現在の約4倍あり、最大で£17.6mの利払いを強いられていた。£17.6mといえば0.36スターリングであり、0.5キャロル。いっぱしの選手が買える額である。ダウニングとか。

(有利子負債総額の推移)






従って前オーナー時代は新規獲得と主力の売却をセットで行わざるを得なかったが、オーナー交代以降は純粋な選手獲得(獲得費用−売却益。ここでは”Player Registrations”選手登録費用)が増加。売る側のクラブから買う側のクラブへの転身が図られている。

(投資キャッシュフローの内訳:前オーナー時代と現オーナー時代)






FFPも取り調べ対象にはなったものの、引っかからずにクリア。まあSwiss Rambleの記述を見る限り、割と怪しい計算だったようだが。

http://swissramble.blogspot.ch/2015/03/liverpool-show-of-strength.html

Liverpool have managed to avoid any FFP issues, even though their cumulative pre-tax loss of £89 million for the last three seasons is clearly higher than UEFA’s €45 million limit (assuming the owners cover the deficit by making equity contributions). This is because UEFA permits some “good” costs to be excluded from its break-even calculation, such as stadium development, youth and community development and goodwill amortisation.

However, the clause that has probably most helped Liverpool is the possibility to exclude the wages for players signed before June 2010 (when the FFP rules were introduced). Theoretically, this would only be allowed if Liverpool’s losses had reduced from 2011/12 to 2012/13, which was not the case, but as the 2011/12 accounts only covered 10 months, the argument must have been that it would have been higher on an annualised basis.

ただし、今後他のビッグクラブと張り合うには依然として収入規模の小ささが懸念。マッチデイ収入※はシティより£3M大きい程度で、マンUアーセナルの約半分。スタジアム改修を控えているものの、増収見込みは+£25m程度でしかない。
またコマーシャル収入もマンチェスターの2クラブに大きな差をつけられており、ブランドを売りにしているリヴァプールとしては看板倒れだ。ロイヤルで大きなファンベースが世界中にある一方で、換金能力が低いのは非常に勿体ない。育成した選手の売却で追加の投資予算を得る手もあるが、主力の売却を恒常的に行いつつタイトルを取ることの難しさは、ヴェンゲルが語ってくれるだろう。FFPは投資額そのものに制限を設けるルールでは無いので、いかに効率的な運営が出来ようと売上拡大で遅れを取れば、効果は相殺されてしまう。若手選手を1stチーム内で戦力化していくのが上手いことは救いではあるが、それだけでは十分ではない。



ピッチ内ではブラジル代表のレギュラーであるフィルミーノに、プレミアでの実績豊富なベンテケを獲得。昨シーズン焼け野原だった前線に計算が立ちそうである。DFラインとGKには依然として不安が漂うが(ブラッド・ジョーンズに替えてボグダンて)、展開次第でCL圏内も狙えそうだ。




それで結論として、今シーズンCL圏内に行けなかった場合に失敗と見なすべきかどうかなのだが、実際戦力的には少々厳しいと思う。マンUかシティがコケれば(シティの場合、すんごくありそうな気がするがそれはまた別の話)4位以内には入れるだろうが、それを期待するのもどうなのみたいな。ただ、CLの放映権料が獲れなければ他の4クラブとの収入規模の差はさらに拡大してしまうので、失敗としておくべきなのかなみたいな。人気は衰えていないブランドの強さを考えれば、長期的には焦る必要もないと思うのだが、また5位か6位で良いですというのも身も蓋もない感じがして。


でも予想は5位。



(sources:The Swiss Ramble, Transfer League, Transfermarkt, Guardian)

2015/16シーズン 上位陣プレビュウ マンチェスター・ユナイテッド編

「何位になりそうか」はよくわからんので、「何位なら成功/失敗と見なすべきか」について、考えてみたいと思います。


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イングランドサッカー界最強のキャッシュマシーン。それがまんゆである。




収入規模は2位のシティに約£90mの差をつけてぶっちぎりの1位。マッチデイ収入1位、放映権収入2位、コマーシャル収入1位と全ての面で死角が無い。2013/14シーズンにCL、ELに参加できなかったため、2015年の決算では売上が一定程度(まんゆ自らの予測では£40mほど)減少する見込みだが、1シーズンでCL圏内に復帰を果たしたことで、2016年の決算以降は問題ないはずだ。

(上位5クラブの売上高内訳:2014)




給与総額はシティを超えてリーグ1位(£214.8m)に到達したが、それでも収益性は他を圧倒しており、営業利益額はアーセナルの約6倍、リヴァプールの10倍の£60.8m。2015年以降は減価償却費が増加すると思われるが、後述するスポンサー契約を考えればお釣りがくるだろう。
当期利益(Profit After Interest & Tax)は約£120mほど減少したが、これは税効果会計による一時的なもの。重要なのは支払利息が約£43m減少したことで、グレイザー一家による買収(LBO)で背負った債務の負担は着実に軽減されつつある。

(有利子負債総額の推移)




収入面をもう少し細かく見ると、強みの一つは収入源のバランスの良さ。プレミアリーグにおける放映権料の高騰(敢えてバブルとは言わんが)がいつか弾ける弾けると言われて久しいが、まんゆは放映権料への依存度が5クラブ中最も低く、全体の30%程度。放映権料はCLに出続ける限り差が付きづらいので、望ましい収入バランスと言える。

(上位5クラブ 売上高の内訳:構成比)




また、コマーシャル収入には2015年からシヴォレー(胸スポンサー、年間£46m)、2016年からアディダス(キット全般、年間£75m)というメガディールが加わる。前者は前任のエーオンの約2.3倍、後者は同じく前任のナイキの3.0倍である。ちなみに他クラブと比べると、2014/15シーズンの時点でユニフォームのスポンサー料はアーセナルの約1.7倍、シティ、リヴァプールチェルシーの約2倍強。それだけもらえりゃ、あの微妙なデザインも喜んで着る。(個人の感想です)







ただし、これだけサッカー事業でキャッシュを生み出す割に、まんゆ自体の最終的なキャッシュフローはマイナスである。これはまあグレイザーのせいで、例えば2012年は事業から£80mものキャッシュを生み出したのに、利息で£46m、元本返済で£29m、配当で£10mのキャッシュアウトが発生。つまり、ほんとなら払いたくないことに£88mも支払ったわけだ。純粋な選手獲得(獲得−売却)と設備投資を合わせたまっとうなキャッシュアウトも£72mあるが、本来なら£160mの大盤振る舞いで、チェルシーシティ何するものぞだったかも知れない。

(2012年のキャッシュフロー内訳)
オレンジが「サッカークラブとしてまっとうなキャッシュアウト」で、赤が「できれば払いたくないキャッシュアウト」



よって、グレイザー一家はいつも冷たい視線に晒されるのである。曰くサッカーは勝利を追求するものであるのに、奴らは利益を追求していると。曰くあの手この手で金をちょろまかし続けるはずだと。曰くこれからもグレイザーの存在がまんゆのアキレス腱になると。
言いたいことは判るが、個人的にはあまり同意しない。まずグレイザーの買収後もまんゆは勝ち続けているのであって、2005/06シーズン以来、プレミアリーグは10シーズン中5回優勝、CLは2回決勝に進出し、1回は優勝した。確かにチェルシーとシティのせいで90年代ほど絶対的な存在では無くなったが、もし利息支払いと元本返済に消えた費用を強化に使っていたとしても、アブラモヴィッチとADUG(シティのオーナー)ももっと金をぶち込んでいたというだけの話だと思われる。





負債が消えても配当で利益吸い上げるだろという話もあるが、ピッチ内の成功を損なうほど配当に回すようなバカだろうか。しかもIPOしたとは言え、確か議決権は殆どグレイザー一家とその仲間たちにある。別にあの一家を擁護したいわけではないのだが、まんゆの競争力を削ぐ要因になると期待するのは無理筋だと思う。

ちなみに2014年の決算では「本当は払いたくなかったキャッシュアウト(unwanted spend)」が£34m、全体のキャッシュアウトの3割以下にまで減った。直近3シーズンの移籍市場での投資額を見ても、もう負債でどうこう言うフェーズは抜けた。あとはタイトルレースに戻るだけだ。

キャッシュフロー:2012年と2014年の比較)


(移籍金:2013/14〜2015/16)

※2015年8月12日まで






最後に今シーズンの成績だが、敢えて言おう。優勝でなければ、失敗と見なすべきだと。
いや、わかる。わかるよ。一昨年7位で、去年が4位。シュヴァインシュタイガーだとか、シュナイデルランだとか、デパイだとか、豪華な補強をしたからといっていきなり優勝は難しいだろ、という話はそりゃわかる。わかるが、天下のまんゆが2年連続CL圏内を目標にしますというのも味気ない話ではなかろうか。財務的には特に問題も無く、債務の返済は粛々とやってれば良い。とくに主力が高齢化しているわけでもない。世界チャンピオンも補強した。チェルシーモウリーニョ(第1期)が就任していきなり優勝したし、シティも5位→3位→1位と一足飛びにタイトルまで漕ぎ付けた。戦力的には実際問題難しいと思うが、そこで優勝と言い切るのが天下のまんゆではなかろうか。負け癖って、一度つくと中々抜けないからね。

一応の予想は3位。



(sources:The Swiss Ramble, Transfer League, Transfermarkt, Guardian)

2015/16シーズン 上位陣プレビュウ マンチェスター・シティ編

「何位になりそうか」はよくわからんので、「何位なら成功/失敗と見なすべきか」について、考えてみたいと思います。


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マンチェスター・シティ


 
FFPの制裁は受けるわ、優勝にはかすりもしないわ、2013/14は散々なシーズンに終わった。アブダビのオーナーシップ取得以降行け行けドンドンで進んできたが、FFPの導入と主力の高齢化を受けて、戦略見直しの時期が来ている。





財務面ではFFPの制裁を除いてほぼ営業損益トントンに達し、売上に占める給与の比率も他クラブ並みに落ち着いた。P/L上のバランスとしては2013年までのアーセナルより良い水準くらいだ。ただ、依然としてサステナブルな事業モデルに到達したとは言い難い。簡単に言えば、売上>給与というサッカークラブとして(数字上は)ビジネスの体を為してない状態は2年前に脱却。次にP/L上はほぼ赤字がゼロの状態まで持ってきたが、キャッシュフローはオーナーの増資で回している、という状態である。


(売上、EBITDA、営業利益の推移)


キャッシュフローの内訳:2014 ”Financing"のほとんどがオーナーからの増資)




ここまでの足取りを振り返ると、まずステップ1:戦力補強。2008/09シーズンにロビーニョ(£30.1m)を筆頭に£110.2mの補強を行ったのを皮切りに、2009/10シーズンは£103.1m、2010/11シーズンは£127.7mをつぎ込んだ。当然、実績もブランドも無いシティに有力選手を呼ぶために必要なのは給与だ。売上拡大が給与の増加に追いつかないため、EBITDA(ここでは売上+その他収入−給与およびその他営業費用。すなわち、サッカークラブとして純粋な収支に近い)の段階で赤字の状態に陥るが、成績は改善した。



ステップ2:“まとも”なサッカークラブへ。成績の改善に伴う放映権料の拡大とスポンサー獲得で売上を増やすとともに、給与水準を落ち着かせ、スカッド編成の効率性を高める。売上に占める給与の比率は徐々に低下し、2014年には59.2%に達した。これはチェルシーよりも低い。また、ジョー、アデバヨール、ブリッジのようにすぐ戦力外になってしまうような高額な買い物が少なくなったため、減損も発生しなくなった。すなわち、獲得すべき選手の査定、獲得交渉、給与設定がより上手になったということだ。これでようやく、2013年にEBITDAがプラスになった。



ステップ3:黒字化。これにはあと一歩。2014年はアブダビ化以来初めて給与総額が低下し、売上の拡大と相まって、営業黒字まであと£-17.7m(FFP制裁を除けば£-1.4m)まで到達した。あとは、オーナー頼みのキャッシュフローの改善だ。








2014年を少しだけ細かく見ると、まず売上面では、他のビッグクラブを圧倒する成長率で拡大を続けており、2014年時点ではマンUに次いで2番目の規模に到達。とくに広告収入(Commercial Revenue)の伸びが著しい。もともとのビジネスの規模が小さかったこと、アブダビ企業群(エティハド航空アブダビ観光局、エティサラット)とのスポンサー契約が寄与していることは確かだが、アンブロ、日産、ヘイズ、SAPといったそれ以外のスポンサー獲得にも成功している。


(上位5クラブの総売上推移)


(5クラブのコマーシャル収入比較)




損益の面では、営業損失を2014年に£-17.7mまで削減。このうち£-16.3mはFFPの罰金なので、ビジネス自体はほぼブレイクイーブンまで到達した。2011年の営業損失£-190.3mからは実に£172.6mの改善だが、このうちのほとんどは売上拡大によるものである。(あとはベラミー、ジョー、アデバヨ−ル、サンタクルスといったダメ資産の減損が無くなったこと。)



立て、立つんだジョー!




ただし、前述のようにキャッシュフローは未だオーナーの増資でカバーしている。2013年と2014年を比べると(1)営業キャッシュフローは黒字に転換、(2)トレーニング施設の整備で固定資産の取得が増加、ということで、最終的なキャッシュインの額は近くとも中身はマシになっているのだが、依然選手獲得費用が大きすぎる。FFPの適用に伴い、今後はこの部分を落ち着かせていくのだろう・・・・と思うじゃろ?そこでスターリング(£49m)とデブルイネ(£40〜50m)じゃよ。



いや、確かに「2列目を中心に今後の主力となりうる有望株を」と言った。言ったが、いきなりそう来るとは思わなんだ。しかもポルトガルU20代表の10番マルコス・ロペスは呼び戻すわ、ナスリとナバスは売らないわ、お前ら2列目ばっかり集めてどうするつもりだ。


ここまで大盤振る舞いができるのは、ネグレド、ジェコ、ヨベティッチらがそれなりの価格で売却できていることに加え、FFPのいう“ブレイクイーブン”に一定の免除事項があるからと思われる。詳細はSwiss Rambleのこの記事後半を見てもらいたいが、要するに一過性の損失(減損やFFPの罰金)、決算確定後に放出された選手の給与等はP/L上の損失から除外される。のでP/L上の損失だけ見てもFFPの制裁対象となるかは判らないのだが、それにしても不安を煽ってくれる動きである。そんなに使って大丈夫か。






今年の成績としてはおおよそ3位か4位、下手したら5位、上手くいけば2位という予想が多いようだ。まあ、そんなとこではなかろうか。相変わらず守備スッカスカだから。2年前までプレミア最高のCBだったヴァンサン・コンパニも、今やすっかり歩く地雷、“Booking waiting to happen(=「どうせファールでカードだろ知ってる」)”扱いである。



(1)広告収入の拡大レースについていく、(2)CL出場圏内を確保し続ける、(3)オーナーに頼らずキャッシュが回る状態に到達する、ということが重要で、とくに(3)のためにはコストパフォーマンスを高めなくてはならない。ということは、これまでのようにバカ高い選手ばっかり買っているようではダメで、初期投資額が安い若手を1stチーム内で育てていく必要がある。もしくはチェルシーのように、育成をある程度外注してしまうか。いずれにせよ、シティが下手なところだ。今年はジェイソン・デナイエル、マルコス・ロペス、ケレチ・イヘアナチョといった若手が1stチームに引き上げられた。彼らをチームに馴染ませ、成長させられるかが長期的には重要である。


ちなみにイヘアナチョの名前が覚えにくいという人は、アヘ穴チョと覚えよう。いかがだろうか、アヘ穴チョ。Pixiv百科事典にエロ同人用語として載っていそうな趣がある。



予想は4位。





(sources:The Swiss Ramble, Transfer League, Transfermarkt, Guardian)

2015/16シーズン 上位陣プレビュウ アーセナル編

(Property Developmentは不動産部門)




アーセナルはある意味ではこの上なく健全なクラブである。
まず、2003年から2014年まで12年連続で利益を計上している。サッカークラブは大体の場合損失を出すが、アーセナルは出さない。
次に、キャッシュフローも基本的にプラスか、差引トントン。要するに、選手の獲得も含めて自己完結している。



(当期利益およびキャッシュフローの推移)






そして、18年かそこらの間、連続してチャンピオンズリーグに出場し続けている。うち1回は決勝まで進み、アンリがGKとの1vs1を決めていれば勝っていたところだった。
近年は資金的に余裕が出てきており、サンチェス、エジルといったワールドクラスを獲得した。補強戦略の転換は純粋な選手獲得費用に表れている。さらに今シーズンは、ベンゼマを狙っているそうだ。ベンゼマ獲ったら見直すなあ、ヴェンゲル。



(純粋な選手獲得費用の推移:マイナスは獲得費用<売却収入)





一方で、ある意味ではアーセナルには不健全なところがある。
毎シーズン優勝候補の一角のように扱われるが、実際には2005年以降真にリーグ優勝を争ったことがあるとは言い難い(3位か、4位だ)。
若手選手を重宝して初期投資を抑えているが、彼らが主力に成長した頃には別の、往々にして直接国内タイトルを争うクラブに売却しており、しかも彼らは移籍した先でタイトルを獲得する(ファン・ペルシー、ナスリ、クリシ、セスク、ソング、フレブ。まあ、フレブがバルセロナで幸せだったかは疑問だが)。アーセナルがこれまで計上してきた利益には主力選手の売却が大きく寄与している。今年7月にヴェンゲルは「もうベストプレーヤーを売る必要は無い」と宣言したが、裏を返せば、売却しなければクラブのポリシーを維持できなかったのだ。毎回ヴェンゲルは「我々は選手を売る必要は無い、彼は残る」と言っているような気がするが。
また、バランスシートには2億ポンドのキャッシュがあるが、他のクラブほどには移籍市場に突っ込まれたりはしない。ついでに言えば、繰上返済もしないと明言している。


(選手売却収入を除いた場合の当期利益推計額)



(有利子負債総額と現預金の推移)






元チェアマンのピーター・ヒル=ウッドは、「CL圏内を確保できなければ痛手ではあるが、大失敗というほどではない。毎年は出られないという想定をしている」と言ったことがある。英語のソースが確認できなかったが、「クラブに関わるすべての人たちが誇りを持てるのは、健全な経営にあり、トロフィー獲得ではない。」と言ったこともあるらしい。勇気ある発言だと思う。使えるけど使わない。狙えるけど狙わない。無理してまでは。

そして、ヴェンゲルが「経済的に制限を食らっていた期間はもう終わった」という頃には、アーセナルの強みはある面では相対的に薄まりつつある。リヴァプールチェルシーは利益を計上するに至り、シティもそれに近い水準に到達した。売上に占める給与の比率も、5クラブ間ではほとんど差が無くなった。



(売上に占める給与の比率)



依然として、アーセナルの総給与はまんゆ、シティ、チェルシーから大分低い。ヴェンゲルは給与だけが勝ち点を生み出す源泉ではないと知っているし、彼の手腕―若手選手を1stチームで戦力化するのは天才的に上手い―はFFPの導入と相まってそう遠くない未来に効力を増すかもしれないが、現時点でチェルシーに匹敵するスカッドとは言い難いように思われる。
それでも、今シーズンの目標としては優勝としておくべきではないかと思う。2016/17シーズン以降、プレミアリーグの放映権料は1.5倍に拡大する。そもそも2013/14シーズンからの3年間ですらその前の3年間から1.6倍に拡大しているため、他のクラブにとってはFFPの順守はより容易になる(FFPは、対象シーズン以前の3年間が対象になる。)その前にあるチャンスを逃せば、また優勝が遠のく期間が延びても不思議ではない。



予想は2位。




(sources:The Swiss Ramble, Transfer League, Transfermarkt, Guardian)